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Zせんこくげんしけん1 【投稿日 2006/03/12】 せんこくげんしけん 【2005年8月8日/19 45】 斑目は力なくアパートのドア開けた。一日の仕事を終え、外で適当に夕食を済ませて帰ってきた。上着をベッドに脱ぎ捨てて、イスにどっかりと腰を下ろし、フゥとため息をついた。 疲れる一日だった。仕事で、ではない。 いつも通りに現視研部室で昼食を取っていた時、大野がアメリカ人を連れてきたのだ。しかも2人も。しばらく自分一人での対応(というか流されるまま)だったので、午後のスタミナも奪われるような脱力感があった。 後でやってきた咲は、自分とは対照的に流暢な英会話で会話をしていたというのに。 斑目は虚空をうつろに見つめながら、「ケョロロ将軍ねえ……」とまた独り言。話題のアニメが気になるわけではない。彼女と自分との能力格差が、今頃になって心に小さな穴をつくっているのだ。 「あ~あ、かなわねーなァ!」イスの上で背伸びをした斑目は、1枚の封筒を手にしたが、中の「あの写真」を取り出すことはなかった。「眺めたところで、何が変わる……」 斑目は自分の気持ちを高ぶらせ、憂鬱な気分を珍しく速攻で振り払った。 「ええい、気を確かに持て。そんなことはどうでもよいではないか! 立てよ俺!」 12日からコミフェスが始まるのだ。しかも社会人になった今年は、額こそ少ないがボーナスも入った。これを同人誌につぎ込まないで何になる。斑目はギラギラした目つきでコミフェスのパンフレットに目を通しはじめた。 その中でひときわ目立つ告知は、同人誌の“業界”を席巻する大物「Hi」のもの。ここ2年ほど、801をメインに、大物作家を使って次々に流行を生み出すプロデューサー的な人物だ。「Hiは、今年は801だけか…」 その時、急にデスク上の携帯電話が小刻みに震えだす。ディスプレイを見て小首をかしげた。 「公衆電話…?」 電話に出ると、『斑目、斑目か?近藤だけど!』と、うろたえた様子の声が聞こえてきた。アニ研OBだ。 「あー近藤さん、久しぶり。どう?仕事の方は慣れた?」 『それどころじゃないんだ。サークルが変だ。OBの手には負えん……アニ研も“すでに押さえられた”。俺は明日大学事務に相談する』 「何の話?」 『気をつけろ……狙いは現視研の……』 (ガガッ!……ガチャ!!)「近藤さん?」 (ツー…、ツー…)その夜、再び電話がかかってくることはなかった。 【8月9日/11 30】 夏期休講中。直上からの日差しがコンクリートを焼き、日陰のコントラストをハッキリとさせている。ジワジワ、ジージーとセミの鳴き声は止むことがない。 人気の少ないサークル棟3階の現視研部室では、団扇を片手に語りあう笹原と荻上の姿があった。夏のコミフェスで大野が売り場に立てなくなったので、急きょ2人で会合を持つことにしたのだ。 笹原は、「今回の主役だから」とテーブルの一番奥に荻上を座らせ、自分はその右手に座った。 笹「まあ、ちょっとした動きの確認だけだからね」 荻「はあ」 笹「それにしても今年は猛暑だね。地球温暖化だね…ははは」 荻「そうでしょうね」 座る位置からちょっとした話まで、気を使っている笹原と、愛想の無い荻上の、たわいもない会話が続く。 そこに、「ここで良いから寝かせてくれぇ」とうめきながら、咲がやってきた。まだまだ自分の店の開店準備で忙しいらしく、目にクマを作って疲労困憊の様子。 が、笹原と荻上しかいないことに気付き、「あらあらー、2人で何やってんの?」と、笹原の向かい側に座ってさっそく茶々を入れる。 「打ち合わせです」と味も素っ気も無い荻上。咲はニヤニヤしっぱなしだ。 何かを期待している。荻上にはそれが嫌なほど感じられる。(先輩誤解してる)とは思う。しかし、(自分自身はどうなの?)(嬉しくはないの?)と自問するが、怖くて自分の心に素直になれなかった。 ガチャ、部室のドアが開いた。 「や~久しぶりだね」と、顔をのぞかせたのは、なんと“あの”原口だった。 「!?」あまりに意外な人物の登場に3人は言葉も無い。むしろ(コイツいまだに学内ウロウロしてるのか)とあきれて言葉も出ない。 笹原は先日、荻上の部屋での打ち合わせで、「結局あの人どこで何してっかわかんないし」と原口を評したばかりだった。 全ての人には見えない線が繋がっていて、想ったり噂したり、何かが起きた時に、その線を通じて相手に通じるという話を聞いたことがある。「虫の知らせ」なんかもその類いだという。笹原は、その話を思い起こして自分の発言を後悔した。 「……何か、用ですか?」と訪ねる笹原は無視して、原口はドア直近のイスにどっかり腰を下ろし、荻上に向けて言葉を発した。 「荻上さんだっけ? “あなたのとなりに”はもうミナミ印刷に入稿したんだっけ?」 荻上の表情が青ざめる。まだ笹原にも大野にも伝えていない自分の同人誌のタイトルではないか。「!?……なんでソレを知ってるんですかッ!?」と声を荒げる。 原口は、気にも留めず、「麦男×千尋というのは使い古されたパターンで新しさはないけれど、キミの画力で見せてるよねぇ。あれはね、しっかり宣伝すれば売れるよ」と続けた。 もう荻上は言葉が出ない、両肩はワナワナと震え、原口をにらみ据える瞳には涙がにじんできた。 (……誰にも見せてないのに……あの人にも決して見せないと……) (汚された!) ガタンッ!とイスを弾き飛ばすように立ち上げる荻上を、咲が支えるように押しとどめ、「アンタ、ちょっと無神経じゃねーの!」と原口に向けて口を尖らせた。 「ああ、ごめんごめん、あんまりいい出来だったんでね。もったいないよね。小さな印刷所で50程度の発行部数なんて、儲からないよ~」 傷つけられた人間への配慮はまったく感じられない。 原口は本題に入った。 「そこでね、僕のツテで、トッパンで1万5千部印刷させてあげるよ、ミナミ印刷発注分は僕が買い取るから心配いらないよ。それでもまだ利益を得られるんだからね」 笹原は驚いた。編集者を目指す上で印刷業界のことも少しは勉強している。トッパンといえば日写と並ぶ印刷業界最大手ではないか。しかも1万5千なんてベラボーな数字だ。大手で個人誌を大量印刷なんて前代未聞、いや不可能だ。 思わず、「……そんなこと、できるわけないじゃないスか。第一、荻上さん個人の趣味の本ですよ。売るために作るわけじゃない……」と、腹の底から絞り出すような低い声が漏れた。 「それは売り方を知らないからだよ。君はいつまでもオナニーだな」原口は切り捨てるように返し、「聞いたことないかなあ。2年前から同人業界で新しいムーブメントを作ってる“Hi”って。あれ、僕なんだよね」とサラリと言った。 「大物作家に2、3原稿上げてもらってるから、そこのメインに荻上さんのマンガを入れる。さっそく刷って、製本を行ってギリギリで出す。僕がプロモーションをかけるから売れるよ~」 荻上を売り出す気らしい。 笹原はいい加減腹が立ってきた「荻上さんのことを何も知らない癖に、何を言ってるんだ!」強い語気で迫った。 「知ってるよ。少なくとも3年前からね……荻上さんが何を書きたいか、キミより理解しているつもりなんだけどね」 原口は、自分のカバンから、古ぼけた一冊のノートと同人誌を取り出した。 「!!!」荻上は驚愕する。原口が持っているノートは、今、自分の手元にあるノートと全く同じ物……。 いや、ノート自体は市販品だから「同じ商品」かもしれないが、それと一緒に掲げられたのは、まだ印刷もされていないはずの、同人誌「あなたのとなりに」製本版ではないか。 荻上は、ふらふらと後ずさりし、気を失いそうになった。咲も立ち上がって背中を支える。笹原も無意識に立ち上がっていた。 原口は続ける、「ボクならキミをメジャーにしてあげられるんだよね荻上さん。プロになれる。儲かるよボクと組むと」 荻上は気力を振り絞り、「誰があなたみたいなオタクと!」と叫ぶ。 「出版社にもアタリは付けてるんだ。友達にキミの腕前なら買ってもいいっていう編集者も居てねぇ。現役大学生作家として大いに売り出そうよ」 「嫌!」荻上は涙をポロポロと流しながら叫ぶ、もう立っているのもやっとだ。 笹原は、普段の彼からは想像もできない刺すような視線を向けて、「原口さん……帰ってください」とだけ呟いた。咲も怒り心頭の表情を向ける。 席を立つ原口、「仕方が無いなあ。もちろん学生の間は、現視研の活動扱いにして利益を還元してくれれば、学内サークルも大いに助かるんだよ?」 「だからッ……」原口は叫びそうになる笹原の発言を押しとどめ、フゥとため息を付いて目を細める。 「残念だけど、ゴネるようなら君たちは“解散”…だ」 ドンッ!とドアが乱暴に開き、見知らぬ男達が部室に入ってきた。3人、黒塗りのマスクをかぶっている。 咲「はい? マスク? 何コレ?」 原口は部室占拠の暴挙に出た。「サークル自治会といくつかのサークルは、ボクの提案に賛成してくれてね」と語る。 マスクマンは助っ人だ。「あんまりゴネるとこちらのプロレス同好会の皆さんが黙っちゃいないけど?」と強気に出た。 異様な緊迫感が部屋を包むなか、ガチャ! とドアが開いた。 「イルチェーンコ!シェフチェーンコォォォォォオ!ヘローヘロォ!」と体いっぱいに己の精神性を表現しながら朽木が現れた。 部屋中の誰もが、マスクマンの皆様も、朽木の狂態に顔中に汗をしたたらせて耐えた。 「アレ……ドシタの皆さん? おおっ、スーパーストロングマシン(マスクの人)が3人も!」朽木は状況が飲み込めないまま一人で盛り上がり始めた。 この隙をついて、咲は荻上の手を取り、腰を低くして男達の前をすり抜けた。「ササヤン!」と叫ぶ咲の声に反応して、笹原も駆け出す。しかし咲に連れられた荻上は足がもつれ、原口に肩を掴まれた。 「!」咲は荻上の手を離してしまう。 ドアから出かかった笹原が手を伸ばす。荻上も思わず手を伸ばす。 「荻上さん!」「ささは……ッ!」 しかし、視界にガタイの大きなストロングマシンが横切り、二人の手は振払われた。 笹原の片手は咲に引かれて部室の外に、訳も分からずその場の勢いで走る朽木を先頭に、咲、笹原は部室を飛び出した。 騒ぎが収まった部室を、サークル自治会長の木村が訪れた。左手が不安げにTシャツの端をいじっている。 「こ、これで良かったんですかね」という木村に、原口は、「みんなの利益のためだからね~、一部の人には我慢してもらわなくちゃね」とにこやかに笑った。 「じゃあ、今日からここは、“新現視研”ということで。あ、木村君、アニ研から沢崎君呼んできてよ。彼にここを任せるから」 どんどん話を進める原口の傍らで、荻上は抜け殻のように放心状態で座っていた。男達が騒がしく右往左往する中で、彼女だけ時間が止まったように動かない。ただ涙だけがスルスルとその頬を伝って落ちた。 視線の先には、まだ製本されているはずのない「あなたのとなりに」が1冊、無造作に置かれていた。 【8月9日/12 05】 昼休み。斑目はいつものように部室に向かう。しかし今日は、前夜の電話が気掛かりで、誰かが部室に出てくるのを期待していた。 サークル棟に向かう道すがら、別の門から学内に入ってきた恵子とバッタリ出くわした。 「あ、君もこれから部室デスカ」 「悪い?」 斑目は、(コイツじゃ事情は分かんないよなあ)とうなだれながら再び歩き始める。恵子は斑目の少し後ろを歩き、携帯をいじったり、無意識に斑目の手に揺られているコンビニ袋に視線を落としている。 別に語ることもなく、2人がサークル棟の階段を上り始めた時、恵子が沈黙を破った。 「あのさー」 「はい?」 「本っ当にこのサークルって合宿する気ないの?」 斑目は、階段を登る歩みを休めることなく、「この前も言った通り、我々にとって夏といえばコミフェスですよ。合宿にまわす金などない。あと……俺OBだよ。決定権ないし」と、素っ気なく答えた。 「第一、キミは他にも夏にアチラコチラへ連れてってくれるイカツイお友達くらい沢山いるでしょうに!」 ちょうど踊り場にさしかかった時に、寂しげな口調で答えが返って来た。 「ココの面子だから、いいんじゃん……」 斑目は立ち止まり、ハタと恵子を見て(あ、俺また無神経なこと言っちまったよ……)と自分の舌禍を後悔した。 恵子は慌てて、「あー、ホラッ、何はなくともコーサカさんいるし……」と取り繕ったが、すぐに、「……まあ、最近は何つうか居心地がいいんだよね。みんないい奴ばっかりだし。キモイのもいるけどね……」と本音が出た。 (素直なんだな)斑目は少しばかり恵子を見直し、「ああ、俺もだな。居心地いいのは同感だ」と、自分の気持ちを吐露した。 「だから就職しても寄生してるんだ」 「キミウルサイ」 階段を上り切って3階の廊下に出た時、斑目の背後でヴヴヴッという振動音が聞こえ、恵子が携帯を取り出した。 「あ、ねーさんだ」との言葉にピクッと反応する斑目だが、部室の近くで3、4人の男がざわついているの見て立ち止まった。 直後、恵子が斑目の半袖ワイシャツの端をクイッと引っ張った。 「何か、ヤバいみたいよ……ねーさんが部室に近寄るなって」 「もう、遅いんじゃないかなァ?」 すでに斑目の前には、久しぶりに目にする“嫌な男”が歩み寄っていた。 【8月9日/12 20】 「新現視研!?」部室前の廊下で原口の話を聞いた斑目は、耳を疑った。 「同人誌の件、荻上さん自身は納得してるんですか?」「ほかの現視研メンバーの同意は?」との質問にも原口は、のらりくらりと答えるばかり。鈍い斑目でも、昨晩の近藤の電話はこの件だったのかと推測した。 原口からは、「まあ斑目も、いつまでもこんな所をウロウロしていないで、仕事に戻ったらどうだ」と、痛いところを突かれた。(あんたも社会人じゃねーのか?)と心の中で突っ込みつつ、斑目はいつも通りの低姿勢で穏便にやり過ごそうと話をしていた。 納得いかないのは恵子だ。 「斑目サン、誰よこのデヴ!」 原口は細い目をさらに細めて恵子にらみ付けてから、斑目に向き直り、「何だ、この躾のなってないコギャルは?」と問いただす。 「笹原の妹デスよ……」 恵子は収まらない。「斑目もこんなのに敬語使う必要ないんだよ。ふざけんな“せっかくの居場所”をかき回すんじゃねーよ!」と噛みつく。 「居場所?」原口が反論する「この現視研は君らがタムロするための場所じゃないんだ。もっと有効に“活用”するために整理させてもらったんだよ」 部室のドアが開き、斑目にとって見覚えのある顔が出てきた。沢崎“新会長”だ。 驚く斑目に沢崎は、「今日のところはお引き取りください。あなた達学外の人間にとやかく言われる筋合いはないんです」と話に割って入り、「原口さん、ちょっと……」と呼んだ。 斑目は、原口の「さ、帰ってくれ」の言葉に黙ってうなずき、「ハイハイ、分かりましたよ……」と言いかけて、沢崎が空けたドアの向こう、部室のテーブルの一角に、無表情で座っている荻上の姿を見た。 荻上も、ハッと隙間から覗く斑目に気付き、2人の視線が交錯した瞬間、ドアは堅く閉ざされた。 斑目は険しい顔つきで、ドアの向こうをにらむ恵子の腕を取り、来た道を引き返しはじめた。 (今日の午後は代休になっちまうな)と斑目は思った。恵子の携帯に入ったメールには『学内にいる現視研は稲荷前に集合セヨ』とあったのだ。 部室内で沢崎は、部室の鍵を取り返す必要があるのではないかと原口に尋ねた。 「今日来ていた誰かが持っているかも知れないな。捜させよう」こうして原口の息のかかったサークルが、大学内で現視研を追いつめるべく動き出した。 【8月9日/13 00】 椎応大学の主な出入り口は、サークル棟に一番近い東端のテラス門、近所の動物公園につながる北門、そして南側の正門、西門の4カ所がある。 原口・沢崎による新現視研と一部サークルは、現視研メンバーの脱出を許さない構えだ。同調するサークルの人間が、普通の素振りをしながら見張りに立っていた。 しかし、その「見張り」が問題だった。 みんなプロレス同好会謹製の「スーパーストロングマシン」マスクを着用しているのだ。しかも緑色、量産型だ。実に分かりやすい。 椎応大学内には、緑豊かな茂みの中に、稲荷の小さなほこらが建てられている。咲、笹原、朽木はそこへと逃れていたが、話題は“追っ手”の容姿に及んでいた。 咲「あいつら、本当に馬鹿なんじゃないの?」 朽木「いやいや、悪の組織に量産型戦闘員は不可欠でありマス!」と朽木が目を輝かせる。 咲「悪ってオイ……」 朽木は、「あの人もなんだかんだ言ってオタクですなぁ……」と、原口を評した。 「ではさっき部室にいた黒いマスクは“三連星”ってことデスカ!ウヒョー!誰が踏み台になるんですかねぇ!」 話がドンドン暴走していく朽木は無視して、笹原は、「荻上さんを助けないと」と歯ぎしりした。 その後ろで朽木は、ガサガサとカバンから何かを取り出しはじめた。 咲「アンタこんな非常時に何遊んでんのよ」 朽「イヤイヤ誤解はナッスィングですよー」 朽木が持っていたのはトランシーバーだ。運動関係サークルが常用する無線の周波数はすでに知っているというのだ。 「うちの大学はよく駅伝出てるデショ。この回線を知ってると、連絡内容が聞こえたりして面白いんですヨ」 驚かされる咲、というかあきれていた。(コイツ盗聴まで……) 笹原「なるほど、相手も大人数だから携帯じゃ連携とりずらいし。無線を使いそうだよね」 咲「でもクッチー。あんたいつもそれ持ち歩いてんの?」 朽木は都合の悪そうな質問はスルーしつつ、鼻歌を歌いながら通信を傍受した。 「それほど人数はないみたいですな。サークル棟自体は見張りが少ないですニョ」 「そう…」咲はフーとため息をつくと、「あいつら何とかギャフンと言わせて、荻上取り戻さなきゃね」と呟き、笹原は無言でうなづいた。朽木はまた鼻歌を歌っていた。 予告編 ※BGM:ガクト(嘘) (カミーユ調で)「ハラグーロ!! 貴様はオタクの浪費の源を生むだけだ!!」 邪道SSの正統なる続編、望まれもしないのに登場!! “新現視研”に囚われた荻上奪還作戦が始まる!! 「Zせんこくげんしけん/オタの鼓動は萌」
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『死を覚悟したにとり 下』 28KB 制裁 差別・格差 同族殺し 番い 群れ 希少種 現代 7. それから数日経った。 山小屋建築の件は滞りなく進む。上司に建築予定地についての報告をまとめ、了承を得た後、資材発注や委託業者の選定。 似たような作業は過去に何度もやって来た事だし、問題など起きない。 ただ、にとりとひなのことが気にかかった。 俺はゆっくり愛好家ではないから、にとりとひなの境遇にどうこうしてやる気はない。にとりとひなが殺されたとしても、 悲しむことはないだろう。だが、目前にある死の危険を、笑って受け入れる生き方に、納得の出来ないとっかかりを感じた。 なるべく考えないようにしたいと思っているが、そうはいかなかった。山小屋建設において、 ぱちゅりーの群れのゆっくりどもをどう諌めるかの問題に対して、未だ対抗策を決めていないからだ。 長のぱちゅりーの顔を思い出すと、どうもにとりとひなの事が気にかかり、鬱になってしまう。 ちなみに、一応最寄の加工所に連絡して、野生ゆっくりの大量引取りについて話をしてみた。すると、 場所と時間の指定があれば、即日で引き取りに来てくれるとのことだった。ただ、捕獲作業まで依頼するとなると、 安くない金額がかかる様なので、捕獲作業は事務所の職員が自ら行おうということになり、 近々に双葉山で山狩りを行うことになるかも知れないと、周りの職員に声掛けをしておいた。 『はあ・・・』 『なんですか、浮かない顔してますね』 『ああ、そんなことないよ。双葉山の山小屋建築の件も、一段落したしね』 『知ってますよ、そこに住み着いてるゆっくりたちの駆除もするんでしょ』 『いや、面倒だし、しないに越した事ないだけどね』 『なんだ、つまんない。是非やりましょうよ』 『あのなあ、下手すれば、双葉山全部のゆっくりを駆除することになるかもしれないだぞ。そしたらとんでもない労力になる』 『え、それは、やだなあ』 『ま、始めの内はお菓子をばら撒いてご機嫌取りをしつつ、それでも揉めるようだったら・・・』 後輩達は、ゆっくり狩りに積極的だった。用があって山に行けば、連中は邪魔はしないまでも罵声を浴びせてくるので、 ゆっくりに良い印象を持っているものはいない。ゆっくりの駆除に賛成なのも、当然な話だ。 俺だって、今後もぱちゅりーの群れのゆっくりどもの相手をしなくてはならないことを考えると、いっその事駆除してやりたい、 そう考えてしまうわけだが・・・。 そして、今日は金曜日。 山小屋建築の計画は実行段階まできた。来週末には業者の人間も双葉山に向かい、資材や重機も入ることになるだろう。 業務を終え、皆土日の休みに胸を躍らしながら、帰路についていく。 俺も、来週の作業予定を確認した後、事務所を出て、自宅に向かって車を走らせていた。 だが、俺の頭の中には、にとりとひなの事が巡っていた。 あいつら、まだ生きているかな・・・ ぱちゅりーの群れと、和解できていないかな・・・ 子ゆっくりたちは、どうしているかな・・・ 自宅に戻り、着替えた後でも、妻と向かい合って座り、夕食を摂っているときも、なかなか頭から離れなかった。 『ねえあなた・・・なんか元気がないわね。お仕事で何かありました?』 『ん・・・』 妻にその様子を感づかれたか。 まあ、仕事の話でも無いし、話してみるか。 『仕事とはちょっと違うけどね。双葉山に、珍しいゆっくりが住んでてね・・・』 俺は、にとりとひなの事、ぱちゅりーの群れとの確執の事を話した。 『え、それって・・・ひどいじゃない。群れに入るか出て行かないと、殺すって言ったの?』 『縄張りの中に住んでるからな』 『放って置けばいいじゃない。誘拐未遂だっけ、それだって放って置いてあげれば、起きなかったんでしょう』 『なんていうか・・・この家の使っていない部屋に、突然知らない人間が住み着いて生活を始めた・・・様なものだよ。 極端な言い方に聞こえるだろうけど、ゆっくりの縄張り意識って、そんなものだ』 知らないけど、多分。 でも確かに、ぱちゅりーが、にとりとひなを出て行かせようとした理由ははっきり分かっていないな。 縄張り意識が原因だったら、幹部のれいむが来た時点で、黙認されることもなかっただろう。いくら権限がないとは言え、 幹部の名において、立ち退きか群れの傘下に収まるかの宣告ぐらいはするはずだ。 正直俺も、長のぱちゅりーの立退き勧告、まりさの誘拐未遂の話を聞いたとき、展開の速さに驚いた。 群れに何があったのだろうか。 『ねえ、だったら、そのにとりちゃんとひなちゃん、うちで飼ってあげたら』 『え、飼う』 『希少種って言うんでしょう、にとりちゃんとひなちゃん。野生ゆっくりでも、ゲス化しにくくて飼いやすいって聞いたし』 そうか、逃げ場が無いなら、俺が保護してやればいい。 そういえば俺、飼いゆっくりにならないかって、声をかけたことあったな。にとりも、悪い返事はしなかった。 珍しいゆっくりを飼うのは、俺も悪い気はしないし。 『いいか?』 『ええ、もちろん』 『わかった』 俺は笑顔で返事をした。久しぶりに心から笑えた気がした。 明日、ゆっくりを迎えにいこう。休日に私服で山に行くのはあまり良くないんだが・・・まあいいだろう。 その夜は妻と、名前は何にしましょうか、いや名前は「にとり」と「ひな」だ、などとちょっとずれた会話をしながら、 寝についた。 そして次の日。 俺はインターネットでゆっくりの飼い方について検索し、該当ページをプリントアウトしておいた。 双葉山の途中にペットショップがあるから、必要なものもそこで買おうと思ったのだ。 午前中に家を出て、車に乗り込む。しかし、俺は、 『・・・』 変な焦燥感に襲われていた。 車の速度が普段より遅い気がして、何度も最高速度をオーバーしかけた。信号の停止時間が普段の3倍に感じた。 ペットショップに寄って、水槽とゆっくりフードを買おうとしたが、素通りしてしまった。 『帰りに買おう、帰りに・・・にとりとひなに選ばせて・・・』 そんなことを言い訳のように呟きつつ、自分自身が急いでいる理由を落ち着いて頭の中で反復した。 殺される。 にとりとひなが、ぱちゅりーどもに殺される。 そう、昨夜は、にとりとひなを救う手立てを見つけたことに舞い上がり、あいつらが今どういう状況にあるかを忘れていた。 ぱちゅりーの群れとの戦端が開かれてから、もう何日か過ぎている。 ひょっとしたら、あの家族は、もう潰されて居ないかもしれないのだ。 『くそっ・・・』 そして双葉山についた。 車を停車させるまでは意識して落ち着いていたが、車を降りてからは全力疾走だった。 双葉山への扉をくぐると、すぐに道をそれ、にとりとひなの住処に向かって駆ける。 大分踏み慣らされた草地を抜け、そこに辿り着いた。 そこは、にとりと、ひなが住処にしていた小川。 普段なら、にとりとひなの番とその子ゆっくりたちが、しあわせな生活を送っているはずなのに。 俺の目前に現れたのは、傷ついたにとり、気絶しているひな、潰されたまりさの死骸が4つ、そして潰されたにとりとひなの子ゆっくり。 「やあ、めいゆう・・・やられたよ」 8. ぱんぱんと、手についた土を払った。 俺の目の前にあるのは子にとりと子ひなの墓。 憔悴しているにとりとひなの替わりに、土に埋めてやった。 因みに、襲撃してきたまりさの死骸は、住処から少し離れた所に穴を掘り、無縁塚のように放り込んだ。 『おちびちゃんのお墓、出来たぞ』 「・・・ゆ・・・ありがとう、めいゆう」 悲しかった。 俺は間に合わなかった。 子ゆっくりを守れなかったし、にとりとひなも、飼いゆっくりになることを拒否した。 恐らく、ぱちゅりーの群れのゆっくりを、一匹でも多く殺し、死ぬつもりなのだろう。 俺の守ってやりたかったものは、全て俺の手から滑り落ちた。 「おちびちゃん・・・」 「くるくる・・・おちびちゃん・・・」 にとりとひなは、お墓の前にお菓子を置いた。俺が前回来た時に、にとりに渡したものだ。 お墓の前で両手、というか髪を両手のように合わせて、子の冥福を祈る親ゆっくり。俺も「ゆんごく」に行ける様に、一緒に祈った。 果たしてにとりとひなの心中はいかなるものだろう。 葬式が終わった後、俺は色々気まずく、帰ろうとするタイミングを図っていたのだが、それを察するようににとりは、 俺に世間話を投げかけて、俺を帰すまいとしていた。 その様子を見て俺は、にとりとひなは寂しがっている・・・そう思った。 子ゆっくりが死んだことで、にとりとひなを縛っていた枷は外れた。もうこの住処に留まる理由はない。 生き続けたいと思うなら、別の土地に逃避すればいい。 ぱちゅりー達に怒っているのならば、逃げたゆっくりを追って群れを襲い玉砕すればいい。 ここに留まり、座して死を待つのは、子ゆっくりに死なれた悲しみから、死に場所を探しているのだろう。 恐怖心も、怒りもない。あるのは悲しみ、そして死の甘受、だがその寂しさ。 『今まで、両親以外の、どんなゆっくりと付き合ってたことがある?』 「そうだね、いぜん、さなえがおさをつとめるむれがあってね・・・」 結局は、ゆっくりの社会にありふれた悲劇の1つに、俺は偶然関わったに過ぎない。 住処の問題の解決方法は「おうちせんげん」しかない。数多くのゆっくりに悲劇を生んだ、欠陥だらけの解決方法だ。 通常種と希少種の差別意識は、昔から有る問題で、その解決方法は人間にすら出せていない。 ぱちゅりーの群れも、にとりとひなも、お互いがお互いに、間違った事と間違っていない事をし、そして起きた結果なのだ。 まして俺は第三者、人間でありゆっくりですらない。ゆっくりの社会にありふれた悲劇の、起きた結果を見ることしか出来ない。 そして時は経ち、カラスの鳴き声が聞こえた。 空を見上げれば、日は傾き始めている。 俺もにとりもひなも、思わず長く空を見上げてしまった。 にとりが申し訳なさそうに、別れの時をつむぐ為に口火を切った。 「おそくなってしまったね、めいゆう。ちょっとはなしすぎちゃったよ」 『いや、いいよ。気にするなよ、話できてよかった。いや、おちびちゃんは本当に残念だったが・・・』 「くるくる・・・おそくまでわたしたちにつきあってくれて・・・ありがとうございます」 「めいゆうにつきあわせてしまって、わるかったよ」 『ん・・・』 いい加減しつこい自分に情けないと思ったが、最後のチャンスだ。 にとりとひなに、飼いゆっくりなってくれるよう、声をかける。 『なあ、思い直してくれないか。俺の所に来て飼いゆっくりになってくれ』 「うん、わるいけど・・・」 『このままぱちゅりーの群れに殺されても、死んだ子ゆっくりは決して喜ばない。悲しむだけだ。それに、』 お別れになればもう二度と、俺はにとりとひなに会うことはない。俺は禁断の言葉を口にする。 『おちびちゃんなら又作ればいい。行き続ければそれができる』 最後の賭けのつもりで言った言葉は、しかし、 「ありがとう。でもにとりにとってのおちびちゃんは、おはかのしたにいる、あのおちびちゃんだけだ」 眉一つ動かさず、笑顔で返された。 俺は、そうか、と一つ呟いて、立ち上がった。 『残念だな。俺は、お前さんと話していると、まるで人間と話をしているようだったよ』 「ははは、じゃあかいゆっくりにはにあわないよ。ぺっとって、かいぬしのまえで、ゆっくりだけをするものだろ?」 『そう、だな・・・それじゃな』 俺は片手を挙げて挨拶をすると、にとりとひなの住処を去った。 もはや、頭の中は真っ白だ。 はっ、と気がつくと車のドアに手をかけていた。にとりとひなの住処から、駐車場まで歩いた記憶がない。 いけない、こんな精神状態で車を走らせたら事故を起こす。 俺は深呼吸をして気分を落ち着け、普段に増して、安全運転をして家に帰った。 家に帰ると妻に、遅くなったことを詫び、にとりとひなの一件を話し、飼いゆっくりは拒まれた事を伝えた。 元々情に脆い妻は、話を聞いて泣いた。 (にとりよ、おまえの不幸を悲しむ人が、又一人いたぞ。) 俺は、明日も知れないにとりのことを思った。 9. 月曜日になった。 いい加減にとりとひなのことは吹っ切れたつもりだった。いや、今はもう、2匹は生きていないかもしれないが。 なるべく作業に没頭して、いやなことは思い出さないようにするに限る。 俺は、メールで送られてきた文章をプリントアウトし、課長のところに持っていく。 『課長、ちょっとよろしいでしょうか』 『おう、どうした』 『双葉山の山小屋の件の、業者の注文書です。後日、判を押されたものを頂いて来ます』 『うん、御苦労。ああ、後さ』 『はい』 『午後にでもゆっくりショップに行って、ゆっくりフードを買ってきてくれるか。ちょっと高級なやつを。 領収書切って。ぱちゅりーの懐柔用のやつさ』 『ああ・・・はい・・・』 『はは、なんだよ、嫌か?』 『いえ、失礼。そんなことはありませんが・・・』 ゆっくりの話になって、つい、にとりとひなを思い出してしまった。 でも、一応話しておくか、全くの無関係ではないし・・・ 『ええ、実は・・・』 俺は、土曜日あったことを、課長に話した。 『ま、そういうわけで・・・』 『そんなことがあったのか・・・でもお前、あんまり、休日に山行くなよ』 『あ、すみません』 『それはともかく、縄張り争いが戦争になったわけか。じゃあ、にとりとひなも、今頃は・・・』 『まあ、分からないですけど、生きていたとしても、近いうちに・・・』 『そうか』 『だからと言って、どうということはないですけどね』 席に戻り、ゆっくりショップの場所を検索する。 なんだ、近場に無いじゃないか。俺の家より遠くに一軒有るだけだ。片道1時間半もかかる。 面倒くさいな、電話で発注するか。 と思ったが、電話で発注するほど大量に買うわけじゃない。税金の無駄である。 仕方なく、午後一で事務所を出て、車でゆっくりショップに向かった。 あんまりのんびりするのも良くないが、初めての物珍しさから、店内を少し見て回る。 「ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 「とかいはなおにいさん!ありすといっしょにゆっくりしましょう!」 「ゆっきゅりしちぇいっちぇくだしゃいね!」 「おお、ゆっくりゆっくり」 れいむ、まりさ、ありすなどといった基本種から、さなえ、らん、きめぇまるといった希少種もいる。 胴付きのゆっくりというのも驚かされた。人間と変わらない。頭と胴体の比率がおかしくて、まるで幼女のようだが。 金バッチのゆっくりともなると高いが、銅バッチなら安い、子供の小遣いでも買える。 にとり、ひなも売っていた。慰めに買ってみようか・・・とちょっと思ったが、まあ今は止めておこう・・・。 さて、時間潰しはもういい。上から数えたほうが早いぐらいの、ちょっとランクの高いゆっくりフードを多目に買うと、 再び車で事務所に戻った。 もう4時だ。 『ただいま戻りました』 『お、お帰り。ちょうどいいところに戻ってきた』 『?どういう意味です』 『双葉山のぱちゅりーの群れの件でな、別の対応策を考えたんだ』 『別の?ゆっくりフードで懐柔じゃなくて?どんなです?』 俺は荷物を置きながら、課長の話を聞く。その方法とは・・・ 『どうだ、単純だが、理に適ってるだろ』 『ええ、まあ・・・なるほど。ていうか、方針が180度変わりましたね』 『懐柔と比べるとな。それはともかく、確認のため、お前毎日、双葉山の確認に行ってくれ』 『ええ!マジですか?!必要なのはわかりますけど・・・』 『その代わり、今日からお前4時あがりでいいから』 『はあ、それなら。ゆっくりフード如何しましょう』 『棚に入れとけ。うまく行くとは限らないから、使うかもしれん』 『はい』 俺は手早く片づけを済ます。 『じゃあ、双葉山に行って、そのまま直帰します』 『わかった。確認取れたら、必ず俺に連絡を入れるんだぞ。あと工事は来週以降って業者に連絡入れておけ。明日でいい』 『はい』 俺は上司から言い渡された秘策を胸に、事務所を出た。 双葉山に向かう。おととい会った、にとりとひなを思い出す。 何も考えない。にとりとひなの姿を思い描くだけだ。もう、俺に出来ることなど何も無い。俺は傍観者なのだ。 双葉山に着く。車を止め降りる、山へ向かう扉をくぐる。 静かに歩く、歩く、歩く。にとりとひなの住処へ。 ここも歩きなれた、急げ、急ぐな、ゆっくり急げ。 俺は、ここを始めて歩いた時を思い出す。無理やり思い出す。 声が聞こえて、その声の主を気まぐれで追った、そして会った。 遠くに小川が見える。にとりとひなが住んでいた、あの小川。 俺はすぐ近くの大木に身を潜める。覗き見る。顔だけ出して、にとりの姿を探す、探す、遠すぎたか、見えない、 見えない、探す、探す、目を凝らす、凝らす。 にとりの帽子。 ひなの、リボン・・・。 潰れた、潰された、ゆっくり。青い青い、緑色の髪。 がさり。 足元で音がした。なんてこと無い。俺の足音。 前に進め、と、脳が指示を、出さ、なくても、俺は、前に、 にとりとひなの住処に、ここはにとりとひなの住処だ。間違いない、だってにとりが、ひなが、ここに、居て、 俺は、こんな結果を、こんなことになるのを望んでなかった、なのに、なんで、なんで、なんで、なんで、 あいつが、なにを、なんで、なんで、なんで 、なん、で にとりとひなは死んだ。ぱちゅりーの群れによって。 理由は、縄張り争い。 俺は、周りを見渡す。まりさが十数匹、ちぇんとみょんが4匹、れいむが2匹、ありすが1匹、死んでいた。 俺は、にとりとひなの亡骸を、両手ですくうように持ち上げ、子ゆっくりの墓の傍に持っていった。 墓は荒らされていなかったが、供えられていたはずのお菓子は、無くなっていた。 子ゆっくりの墓の隣に、また穴を掘り、にとりとひなの亡骸を、埋めた。 ただ、にとりの帽子と、ひなのリボンは、形見にもらった。 他のゆっくりの死骸は放置し、俺は双葉山を出て駐車場に戻る。携帯を取り出し、課長に連絡を取る。 にとりとひなの死を知らせる。 『・・・そうか、分かった。いきなりだったな』 『はい・・・じゃあ、明日?』 『おう、みんなに声掛けておく。お前も明日は、双葉山に直行しろ。7時な』 『分かりました。加工所の方も?』 『加工所も、俺が連絡しておく。お前は帰って休め。大丈夫か?』 『ああ、大丈夫です大丈夫です。じゃ、お先に失礼します・・・』 『おう、お疲れ』 俺は車に乗り込む。 にとりとひなに別れを言った前回とは違い、今度は頭がすっきりしていた。 明日は早い。気落ちしている余裕は、今の俺には無い。 10. 次の日の朝、双葉山につくと、事務所の人間が集まっていた。 特に若者が元気だ。こういう場合、早朝に慣れない若者は少し元気がない事が多いから、これは良いことだ。 『おはようございます!』 『『『おはようございます!』』』 『課長、おはようございます』 『おう、おはよう。昨日はごくろうさんな』 『いえ。』 俺は、課長から大きな袋と、軍手を受け取る。 若くて体格のいい連中は、緑色の大きな網が渡された。 そして、7時になった。事務所の人間は皆集合した。ざっと30人か。 『よし、いくぞ!』 『『『はい!』』』 一斉に双葉山に登っていく。向かうは勿論、ぱちゅりーの群れである。 ゆっくりどもは、双葉山を自分の領土として、人間達に主張してきた。 別に根拠は無いが、対応が面倒であるため、その主張を認めてやった。 だが、その主張とはまったく別の角度の、大義名分があれば、どうなるか。 「むむ、にんげんたちがきたみょん!」 「たくさんでおしかけて、ゆっくりしてないみょん、なんのようだみょん!」 ぱちゅりーの群れにたどり着く。入り口にみはりのみょんが4匹いる。 みょんの言うことは無視し、素早く4匹とも掴み、袋に放り込んだ。 「ゆゆ!おそら!!」 「な、なにするみょん!!」 そんな悲鳴にいちいち返事するはずが無い。皆一様に群れの中に入り込んでいく。 緑の網を持った連中だけが、網を広げて、入り口に陣取った。 群れが静かだと思って進んでみると、ゆっくり達は子ゆっくりも含めて、全員が長の家の前に並んでいた。 ぱちゅりーは演説台の切り株に立ち、何やら話している。 全体朝礼でもやっていたのだろうか。なかなか壮観だ。 ゆっくりどもは、突然の人間の襲来に驚き手間取っていた。 「にんげんだよ、にんげんがたくさんきたよ!」 「みょんが!みょんがつかまってるよ!!」 「なにしにきたのぉおおお!!」 長のぱちゅりーが眼を見開いて喰って掛かる。 「むきょぉおおおお!!なにをしているのにんげんたちぃいいいい!!みょんをはなしなさいいいいいい!!」 『はいはい、ゆっくりゆっくり』 「ゆっくりできるわけないでしょおおおおおおおお!!!どうしてこんなことをするのよおおおおおおお!!!」 そういうやりとりの間に、群れのゆっくりの周りに各自立ち、なるべく逃げられないようにする。 「なんとかいいなさいこのげすにんげんんんんん!!!こんなりふじんなぼうりょくはゆるされないわあああああ!!!」 「そうだそうだ!!!こんなくそにんげんどもなんかせいっさいしちゃえ!!!」 「いいきかいなんだぜえええええ、ちょうしにのりすぎのにんげんどもにめにものみせるのぜえええええ!!!」 『五月蝿いぞゆっくりども!お前ら川岸に住むにとりとひなを殺しただろ!!』 突然の人間の大声に、ゆっくりどもは驚いて静まり返った。 長のぱちゅりーだけが、今の言葉を理解し始めた。にとりとひなといえば、あの不法侵入したゲスゆっくりしかいない。 「むきゅう・・・あのげすなにとりとひなが、どうかしたの?」 ここで課長は、一旦呼吸を整える。周りのみんなも一斉に身構えた。 そして、高らかに宣言した。 『お前たちは人間と同盟関係にあったにとりとひなを殺した!その制裁としてお前らを全員加工所送りにする!』 そして、俺たちは一斉に捕獲作業を開始した。 目の前に居るゆっくりどもを、次々に掴んで袋に放り込む。 「ゆわあああああやめなさい!!!いなかものおおおおおおおおおおおおお!!!」 「やめてねえええええ!!!ゆっくりしてないよおおおおおおおおおお!!!」 「まりさああああああああああああ!!!おさあああああああああああ!!!たすけてええええええええええええええ!!!」 俺達の新たな対策とは。 ゆっくりが想像出来ない、全く別の大義名分を持って、群れを滅ぼすこと。 にとりとひなを、出汁に使ったのだ。 ぱちゅりーの群れは、狩りも、外敵からの防衛も、教育も福祉も一流だった。 だが、唯一つ、外交が弱かった。他の群れや人間とのコミュニケーションは、担当する幹部はおらず、長が兼任していた。 もしぱちゅりーが何か事情があって、別の群れに攻め込みたいと考えたら、その周りの群れに話しを持ち込むだろう。 周りの群れと同盟を結ぶか、最低でも不介入の約束を取り付けるはずだ。 更に、攻め込む群れと交易を行っている群れがあれば、その損害はどう補償するか、新たな境界はどうするか。 こういった問題を解決してから、戦いを挑むはずだ。 だが今回は、にとりとひなを、たかが一家族とみて舐めすぎ、滅ぼすことのリスクを軽視していた。 金網で遮られていたとはいえ、人間と隣接する場所に住んでいたのだ。人間との関わりを疑うべきだった。 「やめてちょうだい!!!しらなかったのよおおお!!!にとりとひなが・・・エレエレエレ・・・」 『知らなかったで済むか!このゲスが!』 捕獲の手はゆっくりどもの巣にも伸びる。巣の中を掻き回してみると、赤ゆっくりが居た。 「おちびちゃあああああん!!!にげてえええええええええ!!!」 「ゆゆ、にんげんしゃん、なにしちぇるの?」 「やめちぇにぇ、いちゃいことしないでにぇ・・・」 「ゆゆ、おちょらを!!」 巣から掻き出した赤ゆっくりは、透明の平べったいケースに並べて入れられた。 赤ゆっくりは多少丁寧に扱わないと、簡単に死んでしまうからだ。 「ゆんやああああああ!!だしちぇえええええええ!!」 「おとうしゃんんん!!おかあしゃんん!!」 などと言っているが、助けなんぞ来るはずがない。 「おちびちゃんんんんん!!!おちびちゃんはだしてあげてねええええええ!!!」 「やめるんだぜええええ!!!おちびをはなせえええええええ!!!」 『五月蝿いぞ、静かにしろ(ゲシ)』 「ゆぎゃ!!」 更に、長の家も調べられた。 『おーい、長の家にありすが隠れてたぞう!』 『長の家?』 俺と課長は顔を見合わせる。 『おお、本当だ』 「いやあああ、はなしなさい!!いなかものおおお!!」 『こいつ、部屋の隅っこで震えていやがったぜ、仲間を見捨てて生き延びるつもりだったのかなあ、ありすちゃん?』 「ありすは!ありすはちがうううううううう!!」 『待った!待った待った!』 俺は、ありすを袋詰めにしようとする職員をあわてて止める。課長も近づいてきた。 『ん、先輩。何ですか』 『いや、このありす・・・』 ぱちゅりーの群れの幹部にありすはいるがこんなに小さくは無い。幹部でもないゆっくりが、長の家に居るわけが無い。 逃げ惑って長の家に隠れたのなら、俺は気付いていたはずだ。 長の家で寝泊りし、長の演説にも参加しないゆっくり。こいつは・・・ 『お前さん、隣の、ありすの群れのゆっくりだな』 震えているありすが、ゆっくりと俺の方を見る。恐怖で怯えながらも、俺の問いに答え始めた。 「そ、そうよ・・・」 『ぱちゅりーの群れに何か用事があって来てたのか』 「べっどさんをうって・・・かわりにごはんさんをうけとる、はずだったのよ・・・」 『べっど・・・』 部屋の奥を見ると、干草を編んで作った、鳥の巣のようなゆっくり用ベッドが10個ぐらい置いてあった。 更に足元に、どこかのコンビニのビニール袋。恐らくこれに入れて運んでいたのだろう。 なるほど、ゆっくり用の家具は、別の群れから買っていたのか。 『じゃあ、ご飯を受け取れば、お前さんの用事は済むわけだな。どれどれ』 俺は部屋を出た。この部屋が何に使われているのか知らなかったが、他所の群れの外交官用の貴賓室だったのだ。 俺は食糧庫に入る。課長と、ありすを手に乗せた後輩も着いてきた。 俺はビニール袋にご飯を詰め込みだした。特に林檎や柿などのあまあまは余さず入れた。 「え、そんなに・・・」 『運べないか』 「はこべるけど、りょうきんにあわないし・・・」 『どうせこの群れは今日滅ぶ。ゆっくりのご飯は人間は食べられないから捨てるしかない。お前さんが持っていけ』 「ひっ・・・」 袋に詰め終わった。後輩はありすを地面に置いた。俺はビニールをありすに咥えさせる。 『ありす、群れに帰ったらこう伝えろ。ぱちゅりーの群れは、人間の同盟国だったにとりの群れを滅ぼしたため、 制裁した。以後、ぱちゅりーの縄張りは、人間が引き継ぐ、と。』 「わ、わかったわ。それじゃ!」 そういうとありすは、あんよで背中を蹴る勢いで、逃げるように去っていった。 『好都合ですね』 『ああ、群れを滅ぼした理由が、すぐ山中に広まる』 『あとは、連中がこのことをどう受け取るかだな』 さて、俺が群れの広間に視線を戻すと、ゆっくりの捕獲は完了していた。 「ゆうぅぅぅ・・・・・」 「たすけてえ・・・・」 「おちびだけは、おちびだけは・・・」 『済んだか』 『ええ、成体、子ゆっくり、赤ゆっくり合わせて90匹ってところですね』 ゆっくりがぎっしり詰められた袋、赤ゆっくりが敷き詰められたケースが並べられた。 長のぱちゅりーは、かなりの量のクリームを吐いて気絶している。死なれてもつまらないし、 オレンジジュースをぶっ掛けたうえで、他のゆっくりどもとは別の袋に入れておいた。 『これで・・・加工所の職員に引き渡して、終わりですかね・・・』 『集団誘拐みたいでぱっとしないなあ・・・何か制裁っぽい感じにしたいんだが・・・』 『そうですね、じゃあ・・・』 俺達は、ただ加工所に連れて行くだけではなく、制裁の儀式を行うことにした。それは・・・ 「あじじじじじじじじ!!!あじゅいあじゅいあじゅいやめてえええええええええええ!!!」 「みょーーーん!!!しぬみょん!!しぬみょん!!たすけてみょーーーーーーん!!!」 「おろじてえええええ!!!あづい!!!あづい!!!おさああああ!れいむううううう!たずけで!!!」 公開処刑を行うことにした。 処刑方法は、ゆっくりを木に吊るし、下で焚き火を行うことによる、火あぶりの刑。 処刑対象は、軍事関係を取り仕切っていた幹部まりさと、適当にまりさ2匹、みょん2匹。 あんよだけを焼くような生易しいものじゃなく、下半身を炭になるまで焼いて、絶命させる。 処刑した5匹のゆっくりは、吊るしたまま放置だ。他の群れのゆっくりどもが、後日様子を見に来る可能性があるから、 処刑が行われたことを見せ付けるためだ。 ちなみに処刑対象から外れたゆっくりは、半分は震え上がり、半分は恐怖の余り気絶していた。 自分が処刑対象にならなくて良かった、などと思っているのだろう。 加工所に送られたほうが、よっぽど酷い目に遭わされるんだけどね・・・どうでもいいけど。 そして午後に、加工所のトラックが双葉山にやってきた。 捕獲した残りのゆっくりを引き渡した。これですっかり終わりだ。 『あ、お疲れさまです』 『済んだな。これで工事は遅らせずに済みそうだな』 『ええ、事務所に戻りますか』 『そうだな・・・これで、他の群れのゆっくりどもも、大人しくしてくれればいいんだがな』 『駄目なら、ゆっくりフードでご機嫌とって。それでもがたがた言う様なら・・・』 『・・・そうだな・・・』 皆、車で事務所に向かっていく。 俺は、にとりとひなの住処があった方を一瞥し、車に乗り込んだ。 11. あれから二週間が経過した。 山小屋建設は本格的に始まった。頑丈な鉄製の柵、ゆっくり対策用の強化ガラスなど、予定通り、 ゆっくりの襲撃を考慮した作りとなった。 『ふう・・・』 俺は現場監督と会い、予定通り作業が進んでいることを確認し、挨拶して回った。 『結局あいつら、大人しくしてくれたなあ・・・』 俺達が一番恐れていた、ありすやまりさの群れからの襲撃は無かった。 人間が起こしたぱちゅりーの群れへの制裁を、他の群れは正当な行為として受け入れざるを得なかったのだ。 ありすの群れは、「とかいはなかぐ」の最大の輸出先を失い、食糧が不足傾向になっているようだ。 今は新たに交易品を増やそうと、すぃーの開発を行っているようだが、なかなか上手く行っていない様である。 まりさの群れは、元ぱちゅりーの群れとの街道を封鎖してしまった。このままでは人間には滅ぼされる判断したのだろう。 群れを拡大しようと、森の奥側に隣接するえいきの群れを攻め落とそうと企て始め、人間とは関係ないところで、 小競り合いを繰り返しているらしい。 結局ゆっくりは、人間の強引なやり方に対抗する気概は無く、人間に屈した、ということだった。 勿論油断は出来ない。あの餡子脳どもが、いつ再び人間に楯突いてくるか分からないが・・・ 当面は、人間とゆっくりの関係は、このままだろう。 『こんなの事なら、もっと早く強気に出てりゃあ、にとりとひなは・・・』 先日加工所に行き、実験という名の拷問を受けていた元長のぱちゅりーから、にとりとひな襲撃の理由を聞いた。 どうやら、にとりとひなが住んでいた、川辺の雑草が欲しかったらしい。 事の発端は、ありすの群れで作られている、干草を編んで作られたベッドだ。 流石ありすの群れで作られたベッドは品質が良く、ぱちゅりーの群れは大量にベッドを輸入した。 だが、ありすの群れへの支払いの為の食糧も膨大な量となり、ぱちゅりーは憂慮すべき事態と、 幹部ありすに命じ、独自にベッドの開発を行わせた。 すると最近になって、ベッドの原材料となる干草は、川辺の雑草を干したものが一番良い、と分かった。 そしてその川辺に、希少種ゆっくりが住み着いたという、れいむの報告を思い出し、眉をひそめる。 何だ、ありすの群れとの遅れを取り戻さねばならないこの大事なときに、訳の分からぬ希少種なんぞ・・・。 不愉快に思ったぱちゅりーは譲歩案など出さず、にとりとひなに高圧的に接して話をこじらせ、 挙句の果て群れのまりさが暴行を受けたと聞くと、碌に事件の調査もせずにとり討伐を強行した。 『ふう・・・』 俺は一旦駐車場に戻り、車から紙袋をおろした。 再び山に入り、今度は工事現場ではなく、かつて、にとりとひなの住処だった場所に向かう。 さらさらと小川の流れる音が心地良いそこにあるのは、にとりとひな、そしてその子供達の墓だけだ。 俺は、墓の前にかがみこみ、袋から板切れを取り出した。 板切れにはにとりとひなを模した、木製のアクセサリが括り付けられている。 俺が、ゆっくりショップのアクセサリ売り場で買ってきた物だ。 更に、板切れの開いた部分に、マジックで一文を書き入れた。 『我が盟友、にとりとひなに捧ぐ』 俺は、お手製の墓標を、墓の盛り土の前に置き、更に袋からお菓子を取り出し、墓標の前に備えた。 俺は立ち上がり、墓の前で黙祷する。 (・・・見殺しにしてすまない、にとり) 俺は、目を閉じたまま、にとりとひなの顔を思い浮かべた。 と・・・ (・・・ゆふふふふ・・・めいゆう・・・) (・・・え、何?!) 俺は、声が聞こえたような気がして、あたりを見た。いや、人など居ない、ゆっくりもいない。 誰も居ない。気配すらない。 (・・・みていたよめいゆう・・・ありがとう・・・かたきをうってくれてさ・・・) (何を言ってる。人間は、お前の死を利用して、漁夫の利を得ただけだぞ) (あははははは、めいゆうはばかだな!にとりは、じぶんでしぬときめたんだぞ?) (なにを言って・・・) (にとりのしを、にんげんがりようしてなにがわるい?) (お前はその結果に、満足できるのか・・・?) (けっかだけみたら、めいゆうが、にとりをころしたしかえしをしてくれた。まんぞくさ) そりゃ、ぱちゅりーの群れを駆除する建前が、そうだから・・・。 だけど。 (俺は、お前に生きていて欲しかったよ) (・・・) 何かが遠ざかる。 (めいゆうのかいゆっくりになれなくて、ざんねんだ。さようならめいゆう) (くるくる・・・さようなら) (さようなら、めいゆうさん) (くりゅくりゅ・・・さようにゃらあ・・・) そう、か・・・ 『幸せそうで良かった』 俺は、にとりたちがゆんごくで幸せに暮らせると、何故か確信して、その場を去った。
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おうち。へようこそ ここはRagnarok Onlineのodin鯖で活動しているギルド「HATTENDO」と、それを温かく見守る「おうち。」に集う人達のコミュニティサイトです。 2012年3月10日エンドレスタワー登頂記念 コメント欄みたいなもの 名前 コメント すべてのコメントを見る このサイト内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権に つきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と 開発元である株式会社グラヴィティ並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 (C)2004 Gravity Corp. Lee Myoungjin (studio DTDS),All Rights Reserved. (C)2004 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
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対決!? ごきぶりくそぶくろ 36KB 制裁 自業自得 自滅 ツガイ 群れ 自然界 現代 まりさが可愛すぎて ※人間さんが出ます。戯れてるだけです。 ※まりさが好きなので、純粋な悪役を演じ切れません。 1.とあるお山の綺麗な花畑 季節は春。 ゆっくりどころか色々な生き物が歌い踊る季節。 そんな暖かい日差し中、ぬくぬくと日向ぼっこをしていたのは 黒い帽子を金髪に乗せている若いまりさと 赤いリボンを風に揺らしている若いれいむだった。 「ま、まりさと…ずっといっしょに ゆっくりしてほしいんだぜ!/////」 「ゆ? そ、そんなこときゅうにいわれても れいむは…/////」 れいむも幼馴染のまりさの事は気になってはいた。 けれど突然の告白にしどろもどろで、丸いほっぺは身に着けたリボンと同じに色に染まっていた。 「まりさは かりが いちばんうまいんだぜ! ぴょんぴょんも はやいのぜ! けんかも つよいんだせ!!! だれも かなわないんだぜ!」 そう言うと、れいむの周りをくるくるポヨポヨし始めた。 「れいむも しってるよ! まりさは みんなのなかで いちばんだよ!」 「まりさだったら れいむを いちばんゆっくりさせて あげられるんだぜ! ちぇんにも みょんにも ほかのまりさにだって わたさないんだぜ!」 「でもね ずっといっしょに ゆっくりするあいては・・・ そ、その おとうさんに そうだんしてから…」 顔をうつむけるれいむの髪に、まりさは綺麗な花を摘んで飾ってあげた。 「きっと れいむの おとうさんも まりさを きにいってくれるんだぜ! なんたって まりさは いちばん なんだぜ! だから れいむも いちばん ゆっくりできるんだぜ! れいむは まりさの れいむに なるのが いちばんなんだぜ!!!」 「ゆぅ……れいむは……ゆんと………」 まりさが懸命にアピールしてもモジモジと返事が煮え切らないれいむ。 とても会可愛らしいれいむを見て、まりさは思った。 れいむのお父さんは、れいむを大切に育てたのだろう。 いろんなゆっくりできない事から守ってあげていたのだろう。 だからこそ こんな素敵なれいむと、まりさは出会うことが出来たのだ。 まりさはれいむを育ててくれた れいむのお父さんに心の中で感謝した。 そしてれいむのお父さんがしてきた大事な役目を これからは自分が担わなくてはならない。 一人前のまりさとして、れいむが一番ゆっくりするために、誰にも負けない強さと賢さが必要なのだ。 れいむを色んな事から守って幸せにしないといけないのだ。 まりさは狩りが上手い、しかし飛び切り上手いわけではない。一番だけど、みんなより少し多いだけ。 まりさは跳ねるのが速い、しかし飛び切り速いわけではない。一番だけど、みんなより少し速いだけ。 もっと決定的な要素が必要なのだ。 それがなければ、れいむのお父さんを安心させる事はできない。 皆と違う何かを…。 「れいむ! わかったんだぜ! まりさは かわいい れいむの おむこさんになるために あかしをもってくるんだぜ!」 「……………………ゆ?」 「そしたら まりさは …れいむの まりさに やっとなれるんだぜ! れいむを ゆっくりさせてあげられる れいむの おとうさんみたいな えらいまりさになれるんだぜ!」 まりさは飛び切りの笑顔を決めて見せると、れいむを暖かい日向にポツンと残して駆け跳ねていった。 もう豆粒ほどの大きさになった幼馴染の背中を見つめて、れいむは独り呟いた。 「まりさは……いつでも れいむの まりさだよ…」 2.とある麓の小さな町並み 「まりさは!(ポヨン) れいむの!(ポヨン) おむこさんに!(ポヨン) なるん!(ポヨン) だぜ!(ポヨーン)」 まりさは軽快なアンヨワークで、ゆっくり出来ない枝さんや石さんを避けて 全速力で生まれ育った山を下っていく。 怖い鎌を持ったカマキリにだって負けない勇気。 ちぇんだって、みょんにだって負けないあんよ。 しかしそれだけでは足りないんだ。 とてもゆっくりしていて、とってもかっこよくて、れいむの一番のまりさになるには もっと劇的で説得力のある証が必要なのだ。 「ゆっ! ついたんだぜ!」 半刻ほどかけて下山したまりさは 草山を書き分けてひょっこり顔を出すと田舎街の空き地へ躍り出た。 まりさは辺りを見回すと、三軒ほど固まった借家の敷地へと入っていった。 雨戸も閉まっているボロい二軒を通り過ぎ、最後の家屋へと帽子を振って跳ねた。 『いい天気だなー、仕事がないのも忘れてしまいそうだー 自由ばんざーい』 その一軒に住んでいた青年は干した布団を取り込んでいる最中だった。 「こーそっ こーそっ」まりさは声を殺して、いや殺せてないが とにかく木陰から青年をジロジロと観察すると庭先へと転がり込んだ。 『おっ ゆっくりか』 「ゆっくりしていってね!」 『ん、ああ、ゆっくりしていってね……ん、いや、やっぱ駄目だ。なんだお前、勝手に入ってくんな』 まりさは青年の問い掛けには答えず脇を通り過ぎ 洗濯ハサミが散らばる縁台に飛び乗ると取り込んだばっかりの布団にボッスンと着地した。 「すこしせまくるしいけど いいおうちなんだぜ! ここを まりさとれいむの ゆっくりぷれいすにするんだぜ! こうえいに おもうんだぜ!!!」 『…狭くて悪かったな、独身男性にはちょうど良いんだよ、というか人の家に――― 「ゆぷぷ、さえない じじいには おあいてが いないんだぜ! まりさには ひとりもの きもちはわからないんだぜ! だいたいこんな おおきなおうちを ゆっくりしてない にんげんが つかうなんて もったいないんだぜ!」 『分かってもらう気は微塵もねーヨ はよどっか消えろ つか退け汚れる』 まりさを乗っけたまま布団を引っ張ると、面白いように転がって雨戸の角にドンっとぶつかった。 頭の上で回る星達が消えると、まりさは青年に怒鳴った。 「ゆっぎぃいいいいいい!!! まりさが だまっていれば いいきになりやがってなのぜ! いいかげんにしないと ゆっくりさせなくするんだぜ!」 『は?』 「まりさは おおきい おうちが ひつようなんだぜ! だけど まりさは よわいものいじめは しないんだぜ! くずにんげんは さっさと りかいして まりさの おうちから でていくんだぜ!!!」 『なんで偉そうなんだ、お前』 まりさのあんよによってコスリ付けられた砂をはたき落として 青年は縁台に腰掛けるとヤレヤレと煙草をふかし始めた。 「まりさは かりが やまで いちばん うまいんだぜ! ぴょんぴょんも はやいんだぜ! なんでも いちばんの さいきょー なんだぜ! えらいんだぜ! なんで ゆっくりしてない にんげんが そんなに えらそうなんだぜ? ぼっこぼこに されるまえに まりさと れいむの おうちから でていくんだぜ!!!」 『そうか…よかったな…がんばれ』 「じじいは いたいめに かいたいのかぜ? さっさと まりさの おうちから でていくだぜ! まりさは つよいんだぜ? いうこときかないと ぎったんぎったんになるのぜ? はやくしないと こうかいするんだぜ!」 『はぁ…ことわる』 「くそじじいは ばかなの? いたいおもいを しないと わからないのかぜ? ぴょんぴょんできなくされても いいのかぜ? ゆぷぷぷぷっ! これだけ いっても わからないなんて きっと あたまが かわいそうなんだぜ!!!ゆぷぷぷふ!」 まりさは青年の腰掛けた場所まで来ると、ニヤニヤと青年の顔を覗き込んだ。 「じじいは ばかだから ずっと いっしょに ゆっくりする あいてが いないのかぜ!! いきててたのしいのかぜ? まりさとは おおちかぎいなのぜ ゆふふふふっ こんなおうちは たからのもちぐされなのぜ!!! にんげんは ほんとうに ゆっくりできない くずなのぜ!」 『明日こそバイト探すかなー… 仕送りなくなったしなー… はああああぁぁぁぁ…』 まりさは青年の周りでドンドンと縁台を揺らして退去命令を浴びせまくるが 青年はただただ残り少ない煙を鼻で味わっていた。 そして灰皿にチビたのを捨てるとマルボロのBOXを取り出した。 「ぐずじじいぃいいい!!!!!! まりさの はなしをきけぇぇええええええ!!! くずのくせに むしするなぁああああ!!!!!!」 無視に激昂したまりさが青年にぶつかると青年の手から煙草の箱が落ちた。 すぐに空中でキャッチしようと反射的に手を伸ばしたが なにやら怒っているまりさが肩を揺らすせいで空気を掴み続けるだけだった。 そして 煙草さんは バラバラに 地面へと 散らばった 散らばった十数本を、一本づつ拾って洗って吸うほど堕ちてはいない。たぶん。 最後のマルボロ3X0円は土に還ったも同然だった。あとは空しくゴミに出すだけだ。 鳩尾の上辺りで熱く凝り固まったフラストレーションは、すぐに"ごきぶりくそぶくろ"へと向けられた。 「なに? くやしいのかぜ? ばかな じじいは ばかなめに あってから こうかいするだぜ! かわいそうなのぜ! ゆぷぷぷぷぷぷ!」 3.とある民家の無職な青年 『ああ、くやしいな…』 青年は立ち上がると体をほぐし始めていた。 間接を伸ばすたびに鳴る音は、のどかな風景には似つかわしくない。 「まりさの じつりょくが わかったら はやく でていくんだぜ? それとも また いやなめに あいたいのかぜ?」 まりさは縁台から飛び降りるとマルボロさんの上で何度も跳ねては砂と煙草をかき混ぜた。 『お前さ…どうして人間の家なんかに来た?ここいらじゃ ゆっくりなんてみかけねえぞ?』 「まりさは かりがうまくて ぴょんぴょんも はやくて おやまで いちばん つよいんだぜ! ゆっくりしてない くずにんげんが こんなの おうちを もってるなんて ゆるせないんだぜ!!! まりさと れいむが もっと ゆうこうに つかってあげるのぜ! かんしゃすると いいのぜ!!! はやく でていくんだぜ! まりさに ていこうしたら おばかな じじいは せいっさいっ してやるのぜ!!!」 『そうか、最悪最低に頭が悪いみたいだな、わざわざ踏み潰されるために山から街へピクニックか。 そんなゆっくりは見たことないな。ゆん生が嫌になって自殺でもしにきたのか? 喜んで手伝ってやるぞ?』 「ゆぷぷっ!! なにいってるの? にんげんが ゆぷぷぷっ!!! まりさに かてるとおもってるの? ゆひゃっひゃっひゃっ!!! あたまが ゆっくりしすぎているのぜ!!!!」 まりさは青年の発言に笑いをこらえることが出来ず 凄んでいるらしい口元からはニヤけた表情を隠せないでいた。 『あ?糞不味い饅頭風情が人間様に勝てると思ってるのか? どっからくんだよ、その自信と根拠はよ。沸いてんのか餡子脳が』 「そんなちいさい からだで どうやって まりさに かつつもりなんだぜ? ばかなのかぜ? そんなの おちびちゃんでも わかることなのぜ!!!」 『…小さい? 何言ってんだ?』 「まりさのほうが からだが おおきいのぜ! からだが おおきいと けんかも はねるのも すごいんだぜ! そんなことも わからないのかぜ? ばかなの? もうだめなの? からっぽなの?」 『…』 「もしかして れみりゃより ながい てあしが あるから つよいと おもっているのかぜ? どう(胴)なんて おまけに すぎないのぜ! からだが おおきいのが すっごい あかしなのぜ! まりさは れみりゃなんて なんかいも おいかえしたことが あるんだぜ!!! みんな こわがりすぎなのぜ!!! ちょっと ばんばんしたり つつけば かんたんに なくんだぜ!!! にんげんだって おんなじなのぜ!! さすが れいむの まりさなのぜ! ゆっへん!!!!!!!」 『…からだ? ああ、体(頭)と胴(四肢)なのか、いやわかんねーよ』 「ゆっふっふっ…そろそろ いたいいたいで おぼえないと つうじないみたいなんだぜ!」 『そうか、そうだな。 確かに俺の体(頭)は、お前の糞袋饅頭ボディよりは小さいな。つってもそんなオツムサイズには、死んでもなりたくないけども』 「いまさら わかったのかぜ? いまさらあやまっても まりさのおしおきたいむは これからうちょうてんなのぜ!!! ゆへへへへへへ!!!!」 『わかってないのは、お前だよ』 青年は庭先の倉庫へ向かうと突っ掛けから古びたスニーカーに履き替え ヨレヨレのダンボールをいくつか持ってまりさの前に戻ってきた。 『おい、勝負だ』 「ゆ?」 『先に言っておくが、お前は山で一二を争う"すごい"まりさらしいが…』 「まりさは いちっばんっ なんだぜ! そんなことも おぼえられないのかぜ? いろいろ たりてないのかぜ? もっと むしさんを たべたほうがいいんだぜ? そしたら まりさの あんよの さきくらいの ちからは だせると おもうんだぜ!!!」 『俺は…普通の男だ、プロボクサーとやりあっても当然勝ち目はないし、普段鍛えているわけでもない。 漫画を読んだり携帯ネットしているだけのパンピーだ。むしろ同世代なら下から数えた方が早いくらいの男だ』 「なに じぶんが できそこないだって あぴーるしているのかぜ? どうじょう してほしいのかぜ? てかげんしてほしいなら ちゃんと どげざで おねがいするといいんだぜ! まりさは じじいの いうことなんか なにひとつ きかないけどね! ゆぷぷぷぷぷっ!!!!」 『そうか俺の糞加減を、お前の糞頭でも理解したか…だったら……………………… 「なんなのぜ? いのちごいなのかぜ?」 『ぴょんぴょん勝負だ』 青年は手ごろな枝を拾って野生のまりさと自分の前に一本線を地面に引いた。 枝を拾った人間を見てまるごしのままギタギタにしてやろうと まりさはニヤケていたが、人間はすぐに枝を捨ててしまった。 『あの柿の木が見えるな? あそこまで俺と競争だ』 「ゆ? なんでそんなこと まりさが しないといけないのかぜ? つきあうつもりはないんだぜ! さっさと なきわめいて まりさの おうちから でていくんだぜ!」 『なんだ?自信がないのか?…まりさは口先だけだったんだな、お笑いもんだなオイ』 「なにいってるの? あほなの? じつりょくの ちがいが わからないのかぜ?」 『わからないから見せてくれって言ってるんだ お前様の実力に恐れおののいたらケツ巻いて逃げてやるよ』 「じじいに かっても なんのじまんにもならないよ! でも それくらいは かくしたのざれごとに つきあってあげるのぜ!!」 というわけで、ヨーイドーン!と駆け足勝負が始まった。 タタタタタタタタタタタタタタタタタタッ! ポヨン!ポヨン!ポヨン!ポヨン!ポヨン! そして案の定大差をつけて青年に軍配が上がった。 「ぜえぜえ…ど…どぼじで!……ぜえぜえ……まりさが!…いちばん!…ゆぐぐ…ぜえぜえ…」 『もっかいやるか? 一回だけじゃわかんないものな?別にかまわないぞ?』 ヨーイドーン! タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ! ポヨヨン!ポヨヨン!ポヨヨン!ポヨヨン!ポヨヨン!ポヨヨン! はい青年の勝ち。 「ゆぅうううううう……なんで かてないんだぜええええ!!!! どうじでぇえええええええ!!!!!」 『偶然かもな? 最後にもう一回やってみようか』 ヨーイドーン! タタタタタタタタッ 『うわっ』 ドデっ! ポヨヨン!ポヨヨン!ポヨヨン!ポヨヨン!ポヨヨン!ポヨヨン! スタート直後に青年は勢いよく転んでしまった。 笑みを殺せずに変な顔になったまりさが、すかさず追い抜いて距離を離していった。 「じじいは そこで くやしがっているんだぜ! しょうぶのせかいは ひじょうなのぜ!!! ゆぺぺぺっ!!!!!」 『わー まてー おまえー』 青年は倒れたまままりさに手を伸ばして叫ぶが ダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!!!!!! 饅頭のゴール手前、まりさが勝利を確信して最後のスパートをしようとすると ムクリと起き上がった青年が全速力でまりさの後ろを詰めて来た。 「ゆぅぅぅううううううう!!! ままままままままけないんだぜぇええええええ!!!!」 しかしポヨヨンと跳ねるまりさは、大差の甲斐なくアッという間に追い抜かされてしまった。 青年は先にゴールすると木の下でまりさを応援している。 『がんばれー まりさー さいそくの まりさー おやまで いちばんの まりさー』 そして 「どうじで にんげんなんがに ぴょんぴょん まけるのぉおおおおおおおおおお!? おかじいでじょおおおおおおお!!!!」 『残念だったな、つーかさ、分からないの?』 まりさの隣に並んだ青年は、またスタートラインのようなものを地面に描いた。 「ま、まりさ…つかれたんだぜ……ちょっと ゆっくり…するのぜ…」 『問題ない。今度はもっと楽だ。次にやるのは一回の跳ねる距離だ。それだったら疲れないだろ?』 「ゆぅ…それだったら…ぜえぜえ…いいのぜ……さっきのは…まちがい…だった…ぜえぜえ…なのぜぇ」 『ほら、ネクターだ 飲め』 「ごーくごーく ししししししあわせー!! くそじじい!!! もっと まりさに あまあま よこすんだぜ!!! はやくするんだぜ!!」 『死ね。どうだ?疲れは治ったか?』 「ゆふふふふふ!!! てきに しおを おくるなんて じじいは やっぱり ぼけてるんだぜ! こんどこそ まりさの しんの じつりょくを みせてやるのぜ!!!」 そんな分けで勝負は幅跳びへと切り替わった。 まりさは体を前後にクネクネしながら勢いを稼ぐと「ゆっくり ぴょんぴょんするのぜ!」ポユーン!と飛び跳ねた。 するとまりさは自分の体二つ分くらいまで前進して着地した。 『よし そこでジっとしてろ。お前は こっから…ここまで飛んだわけだ。いつもこれくらいか?』 「いつもは もうすこし ぴょんぴょん できるけど まずまずのけっかなのぜ!ゆふふふふん!」 『じゃあ 俺の番な せーの…』 青年はまりさと同じスタート地点に立つと両足飛びをした。 「ゆ!?ぶつか……ゆんや、じじいが ここまで とべるはずないのぜ!!! ぶざまな すがたを けんがくなのぜ!!!」 まりさの頭上に飛来した靴の裏は 「ゆぎぃ!?」 汚い三角帽子をグレイズしつつ飛び越した。 『ふう、いやーまりさの記録に迫るどころか 飛び越えちゃったよ』 「ゆぅぅうううううううううう!?」 『どうだ?すごいか? 待っててやるから俺の記録抜いてみろよ』 青年はスタートラインに膝を突いて測定役となった。 まりさは飛んでは戻ってを繰り返し、自分の倍はある青年の記録に挑戦し続けた。 「ゆんっ!」ポユーン!!…負け。 「ゆぎっ!」ポユーン!!…負け。 「ゆがっ!」ポユーン!!…負け。 「ゆぁぁぁぁぁあああああ!!!ゆぁあああああ!!!ゆああああ!!! まりさは じじいなんがに にんげんなんがに まげないんだあああああああああ!!!!!!!!!」 砂埃を巻き上げ汗と涎を撒き散らしながら まりさは30回ほど挑戦した結果ついに力尽きた。 青年はまりさが目を回している間に家に上がって甘いジュースを持ってきた。 『ほい、ジュースだ』 「ごーくごーく ししししししあわせー!! もっと まりさに あまあまを― 『どうだ? そっこから見て俺の記録まで届く自信はあるか? 今までのゆん生で、この距離を一足飛びで超えた事なんてあったか?』 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!」 さすがに見た目で分かる自分の倍以上の距離と 今さっきの挑戦経験から、まりさは茹蛸みたいにカッカしつつ言葉を詰らせた。 『無理だよな? お前、やっぱり人間には勝てないんだよ』 「まりさは………………………………まりさは ちょうしがわるかったんだぜ」 『あ? 調子が良かったら、あそこまで飛べるか? なあ、ちょっと見てろお前』 青年はスタートラインに再び立つと 『あそこのな、地面が乱れている所がお前の限界点だ。調子が良かったとしても、あれとそんなに大差ないだろう? でな…』 青年はスタートラインに左足を残したまま右足を伸ばした。 その先はまりさが奮闘した最高記録の中心だ。 『お前が頑張って跳ねて飛んだ距離ってな、俺にとっては"ぴょんぴょん"するどころか、跨いで届くんだよ。 分かるか? 実力の違い。俺が歩く一歩で、お前の"ぴょんぴょん"なんて越えちまんだ なのに"ぴょんぴょん"合戦なんて、カケッコしても勝てる分けないだろ? 信じられないなら離れた距離から追いかけっこでもしてみるか? 即座に捕まてやれるぞ?』 「ゆぅぅぅぅぅぅぅ!!! ゆぎぃぃぃぃぃぃ!!!! やってみなければ わからないのぜぇええええ!!!!!!」 まりさ大敗。 何メートルのハンデを上げても、まりさは奇声を上げて逃げ惑いつつ即座に追いつかれた。 「じじじじじいはぁああああ!!!!!何かズルをしているんだぜぇえええ!!!!!!!」 『どうやってズルが出来るんだよ。幅跳びの差を見たろ? これがお前が馬鹿にしていた胴の差ってやつだ』 やれやれと軽い運動したなと遊びを切り上げ始める青年だったが 「ずるいんだぜ…」 『何がだよ』 「まりさには あしが ないんだぜ!」 『…』 まりさには足がない。足を使うのはズルい。 「まりさは せいせいどうどうと しょうぶしてるのに じじいは くずだから ずるしてるんだぜ! じじいは あしを つかっているんだぜぇぇえええ!!!」 『…お前の"あんよ"とは違うのか? まあいい、"胴"の"足"がないから負けたと。その通りだ。 "足"がないから…お前は人間以下なんだよ。お前の"ぴょんぴょん"は人間にとって全然凄くない。"足"を持ってないお前は人間以下だ』 「…ゆ!? ちがっ…まりさは にんげんなんかより つつつつつつつよいのぜ!!!!」 『次に行くぞ』 放心仕掛けているまりさはそのままに、青年は手ごろな石を拾ってまりさの前に置いた。 『石ころだ、お前も虫を狩ったり木の実を獲る時に使うだろ? その飛距離を俺と勝負だ。どこまで遠くに投げれるかってことだ。足は関係ない。』 「じじいは ばかなの? そんなちいさいからだで とおくにとばせるわけないんだぜ?」 『そうだな。わかったからやってみろ。あの木に目掛けてみな』 青年が急かすと、まりさは石を口先に含んでぷくーーーと膨らんだ 「ゆぺっ!」 まりさの口から放たれた石ころは、2メートルくらいで勢いをなくしてコロコロと地面に転がった。 「ゆっふふーん! まりさは もりで いちばんの すないぱー なんだぜ! あけびさんも かきさんも まりさの えじきなんだぜ!!」 青年は石ころを拾いに行ってマークをつけると、ない鼻を高くしてふんぞり返っているまりさの元に戻った。 『あそこに物を置いてあるのがお前の記録だ。さて、俺はどこまで飛ばせると思う?』 「いしさんを あつかうのは とってもむずかしいんだぜ! ぶきような じじいは きっと すぐ めのまえに おちちゃうんだぜ! かりも おぼえたての おちびちゃんみたいに おまぬけに なるにちがいなのぜ! ゆぷぷぷぷぷっ!!!!!」 『もっと飛ばせると思うけどね』 青年は石を拾って構えた。 栗ほどの大きさの石ころを青年は三本の指で摘んだ。 「なにしてるのぜ? いしさんをくわえないで どうするつもりなのぜ?」 『こっちの方が、飛ばせるからさ』 青年は振りかぶりもせずに、下手投げでヒョイと浮かして離すと 案の定まりさの記録を少し超えて離れたところに着地した。 「ゆぅうううううううう!? もももももういっかいやるんだぜええええ!!!!」 ポヨヨン! かぷっ ぷくぅううううううう!!!!!!! 「ゆっぺっ!!!」 頑張ったまりさは青年の記録を超えて先ほどより少し離れた場所に飛ばすことが出来た。 『俺もやるぞ』 そして青年も投げ続けると、またちょっとだけまりさの記録を超えた場所に石が落ちた。 「ゆっがああああああああああああああ!!!!!!」 まりさは急いで石ころを回収すると投合地点に戻る。 「ゆぺっ!」『ほいっと』 「ゆぺっ!」『ほいっと』 「ゆぺっ!」『ほいっと』 「ゆぺっ!」『ほいっと』 まりさが何度もリトライして自己新記録を出す度に 青年はほんの少しだけまりさの最長記録を破る。 『もうこのくらいが限界なんじゃないか? もうさっきから自分の最長記録も塗り替えられないじゃないか』 「ゆっがぁぁぁぁああああああああ!!!! じじいだって まりさと そんなに かわらないのぜ!! これはもう おあいこも どうぜんなのぜぇえええ! ゆへへへへへへへへへへへ!!!!!!!!!!」 歯茎を見せて真っ赤に憤怒するまりさに青年は言い放った。 『じゃ、本気出していい?』 「…ゆ?」 青年が先ほどまでまりさが格闘していた石ころを握り締めるとピッチャースタイルで投球した。 投石は まりさの記録を軽く飛び越え、目掛けた木に着弾すると甲高い音を出して根元に落ちた。 「…………………………ゆ?」 『すまん、今まで手加減してた。さて、また勝負するか? 今度は全力で投げてやるよ』 「…」 ヒョイ コロン… ヒョイ コロン… ヒョイ コロン… 青年は同じくらいの石ころをかき集めると適当に石をばら撒いた。 その落下場所は まりさの最高記録を軽々と超えていく。 『お前が頑張った記録な? こんな適当に投げるだけで超えられるんだわ…ほら、寝転がっても投げても余裕だわ』 散らばった石ころ達を愕然とした面持ちで絶句のまりさ。 青年は今度こそ片付けをしようと石を拾いに掛かった。 「…て」 『ん?』 「どうして てを つかって いしさんを とばすんだぜぇえええ!? まりさは くちを つかってるんだぜええええ!!!」 『手の方が、お前より遠くに飛ばせるからだ お前だって帽子で持ち上げたり あんよで蹴るよりはいいから口なんだろ?』 「ずずずずずずずずるいんだぜえええええ!!!!!!」 『ん?』 「まりさには てが ないんだぜええええええええ!」 『ああそう、"胴"の"手"がないから負けたと。その通りだ。 "手"がないからお前は、人間以下なんだよ。お前の"ゆぺっ!"は人間にとって全然凄くない。"手"を持ってないお前は人間以下だ』 「うぞだぁああああああああああああ!!!!!!!ちがうううううううううう!!!!!! まりさは にんげんより つよいぃぃいいいいいいいんだぁぁぁぁああああああああ!!!!」 せっかく青年が拾い集めた石ころを、ぷりんぷりんとお尻で散らかすまりさに青年は告げた。 『んじゃ、次だ』 青年は最初に倉庫から出したダンボールを組み立てて、四角い箱にするとまりさの前に置いた。 「なんなんだぜ? じじいの おうちなのかぜ? ここは まりさの なわばりなのぜ! おうちなら ほかでつくるんだぜ!」 『お前が鈍足で石も満足に投げれないのは分かった。』 「ぞんなごどなぃぃぃぃいいいいい!!!!! にんげんに まけるはずがないんだぜぇぇえええ!!!!」 『はいはい。お前このダンボールに体当たりしてみろ。お前は強いんだろ? どれだけ突き飛ばせるんだ?』 「ゆ? ゆふふふふふふふふふふっ…じじいが すこしくらい はやくても ついに まりさの とくいなぶんやなのぜ!!!」 『早くやれ』 「どんな すばしっこくても けんかに つよくなければ いみがないのぜ!!! にげあしだけは はやい じじいはまけいぬなのぜ!」 『もしかして自信ないのか?そんなに御託並べて― 「うるざいぃいいいい! まりさの ちからを みてるんだぜえええええええ!!!!!!」 『しっかり見てやるよ』 「じじいの おうちは ゆっくりしないで しね!!!」 一跳ねボスーンとダンボールに飛びかかると、軽い音を立ててダンボールの側面が少しへこんだ。 「ゆっふっふっ どうなんだぜ? まりさは どんなやつでも ぼっこぼっこに してやるんだぜ!!!! まりさに かてるやつは だれも いないんだぜ!!! もしかして じじい しーしーもらしてない? みんなに みてもらうと いいのぜ!!! ゆぷくくくくっ」 青年はまりさが体当たりしたポイントを指差し 『お前の体当たりでココがへっこんだ。ちゃんと見たか? んじゃ次は俺の番だ。』 青年はダンボールを回して、まだ平たい違う面を自分に向けた。 「しろうとが むりをすると けがするのぜ? まりさの まねごとなんて たくさん はやいのぜ!」 『せーのっ…』 ボッ!!!!!! ダンボールは青年のトーキックに持ち上げられ 空中で回転しつつ古びた折れ目が千切れてボロボロの姿で地面に落ちた。 青年はダンボール箱だったものを拾ってくると、まりさの目の前に投げ捨てた。 『どうだろう? どっちが強いと思う? どう見えた?』 青年はボロボロに壊れたダンボールを踏みながらまりさに問いただした。 「ゆ…あ……ぁ………」 『わかんないか?』 青年は新しいダンボールを組み立てると、まりさの前に置いた。 『俺と同じ事出来る? バラバラにしてみ?』 まりさはしばらく無言のままだったが、目を覚ましたように一心に挑戦し始めた。 「ゆっくりしないで しね!」ポヨン!ポスッ! 「せいっさいっ なんだぜ!」ポヨン!ポスッ! 「はやく こわれるんだぜ!」ポヨン!ポスッ! 「ゆっがっああああ!!!」ポヨン!ポスッ! しかしダンボールは置いた位置から多少ズレたりする程度で壊れる気配はない。 「じ…じじいが…」 『ああ』 「じじいは、まりさのあとで やったから じじいのおうちは こわれやすかったんだぜ!!!! ずるい やつは ゆっくりしないで さっさと しねぇえええええ!!!」 青年はダンボールを片付けると落ちていた長い枝を何本かヒモで束ねた。 そしてノコギリで均等な長さに割けるとまりさに渡した。 『折れ』 「ゆ?」 『俺もやる、どちらがグラグラに出来るか勝負だ』 「ゆぐぐ」 『また負けると思ってるのか?やっぱりお前は口だけなんだな』 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ」 怒髪天のまりさは枝の上で何度も跳ねたり、咥えて地面に立てかけて折ろうとしたり 考えうる最善の方法を尽くしたが…さほど変化はなかった。 「ぜーはーぜーは……あんよが ちくちくしてて いたいのぜ…………ゆ? じじいも えださんを どうにもできてないのぜ? ここここんどこそ ひきわけなのぜ! ゆへへへへ…ゆへへへへへへへへへへっ!!!!!!」 『いや、今までまりさがどれだけ強いか見てたんだ。では俺も挑戦するぞ』 青年が枝束の両端を握り締め力を込めると バキバキに折れた。 破片のしぶきが、まりさに降りかかったが 瞼を閉じもせずに黒帽子は青年を呆然と凝視していた。 『まだまだ』 二等分に割れた枝束を地面に置くと、まりさと同じようにその上で足蹴にした。 バキバキと音を立てて瞬く間に粉砕されていく。 『どう?』 「ゆ…あ…」 信じられない。分かりやすい顔があった。 『どうだ?どうなんだ?』 「て、てあしが…あるから…なんだぜ」 まりさはコナゴナになった枝だったモノに目を剥きつつ答えた。 『わかったよ、まあ"手足"がないと曲げるとか折るとか難しいもんな』 「ゆ、ゆへへへへへへへへ…そうなのぜ ずるいのぜ! にんげんは ずるいのぜ!」 『ズルでもなんでもいいけどな、結局手足のないお前って奴は、人間と比べて大したことないって事だな? そうだな?』 「ゆっがぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!! てあしが あるからって いばるじゃないんだぜぇえええええ!!!! まりさの つよさは そんなもん かんけいないんだぜえええええ!!!」 『そっかー "て"、"あし"のある れみりゃにだって 勝てるんだもんなー』 「ゆふふふふふふ!!!! まんまと じじいに だまされるところだったんだぜ!!!! まりさの つよさは まったく ゆるがないんだぜ!!! じっせんが いちばん だいじなんだぜ!!! まりさは いちばん!いちばん!いちばんんんんん! ゆへへへへへへへへへへへ!!!!!!ゆへへへへへへへへへへへへへへへ!!!」 まりさは縁台に再び跳ね乗ると高笑いをした。 垂れる冷や汗で肌をふやけさせながら喉が枯れる様に笑っている。 青年は隣に腰掛けると、一呼吸をついてから胡坐をかいてまりさに向き直った。 『具体的に力比べしてやるよ。お前は体当たりで喧嘩相手をのびさせた事はあるのか?』 「ゆ? いたいいたいで なかせるのなんて かんたんなのぜ! まりさは けんかだって だれにも まけないんだぜ!!! なに? じじいは こわがってるの? しーしーしちゃうの? ゆぷぷっ」 『一発 俺にかましてイイぞ。ちゃんと避けないで当たってやるから』 青年は胡坐のまま両腕で体を支え、まりさに額を突き出した。 「なんなの? どけざしてるの? なにをしても ここは まりさの おうちなんだぜ? どれいにでも してほしいのかぜ?」 『やーい ばかまんじゅう こわくて おれに てが だせないんだー』 「ゆっがぁああああああああ!!! その へらずぐちを ふさいでやるんだぜ!!!!」 飛び掛ったまりさは青年のおでこの辺りに牛皮の頬を全力でぶち当てた。 改心の一撃を空中で確認すると縁台に着地した。 「ゆひひひひひひひ!! いたい? ねえ いたい? じじい どうしたの? ないてるの? ゆぷっ… ゆぷぷぷぷぷふ… ゆへへへへへへへへへ!!!!!」 青年はうつむいたまま動かない。 まりさは尻を振り転がって大笑いをしている。 「まりさの ひっさつわざは なまいきな ありすも すばしっこい ちぇんも みんな いっぱつで こうさんさせた うるとらわざなのぜぇええええ!!! じじいも とるたりないのぜぇえええ!!!」 まりさは暴言を発しながら、青年の周りをポヨポヨ回っている。 「ゆっくりしね! ゆっくりしね! ゆっくりしね! おもいあがって にんけんごときが まりさを ばかにするからなんだぜ!!! てんごくで はんせいするといいのぜ!」 ポスン!ポスン!まりさの容赦ない暴行が始まった。 青年の腕、頭、尻、腿、あらゆる場所に手加減のない暴力が行われる。 勝ち誇ったまりさの奇声と打撃音が混じり合い凄惨な場面は、すぐに終わりを見せなかった。 「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」 ハイになったまりさが、体内の糖分を使い切り息を切らせていた。 「おもい…ぜぇぜぇ…しったのかぜ!………はやく……ででいくのぜ…ぜぇぜぇ…ずっとゆっくり…させるのは……かんべん…ぜぇぜぇ…してやるのぜ」 まりさはこの無用のデカ物をどうやって捨てるか考えていると青年が顔を上げた。 「…ゆ?」 そこには、まりさが予見していた苦痛に満ちた顔も悔しさすらもない 最初から見せていた怠惰で間抜けな顔が合った。 『はぁ…ぼっこぼこ? 何だよ別に大したことないな。 俺が無理して我慢してるとでも思うか? あんだけ何発も打たれて痛かったとしたら、さすがに我慢できてるハズないだろ?』 青年は服の乱れを直して姿勢を正した。 信じられないという顔をしてまりさが詰め寄った。 「ゆ? どぼじで? どぼじでなんともないの??? なにがまんじでるの? はやく なくんだぜ!? おそろしーしーするんだぜ!? なけぇえ! なけぇぇええ!!!!」 まりさ自身が自分でも分けが分からない涙を流しつつ青年に体当たりを続ける。 『どうしてか? かわらないのか?』 「どぼじで!? どぼじでなの!? どぼじでなのぉぉお!? わがらないんだぜぇえええ!? ばりざ わがんない わがんないいいいいいぃぃぃぃ!!!!」 『お前の体当たりは…』 「おがじいよ!? まりざは いぢばんなんだぜ!? いままで ぜんぶ やっつけでぎだのぜ!? まりさは! まりさは にんげんより つよいんだぜ!?」 『人間には、全く、一つも、完全に、通用しない』 「うううううううううううそなのぜぇぇええ!!!!! ゆっくりしてない でくのぼうの にんげんが まりさに かてるはずないのぜぇぇぇ!!! はやく ないて あやまるんだぜぇええええ!!!! ゆっくしないで しねぇぇえ!!! そくざに しねぇえええ!!!!」 わなわなとしているまりさを、青年が両手で掴んで胡坐の上に乗せた。 まりさは逃げることもせずに、ただ青年の主張を非難し続けている。 「うぞだ! おがじい! まぢがっでる! まりざは いちばんだ! いちばんで すごくで れいむの ばりざなのぜ!!! にんげんに まげるばずない!!!」 『お前さ、喧嘩が強いって事は それなりに打たれ強いんだろ? だったら一発だけやり返させてくれよ?』 青年はまりさを抱えた両手に力を込める。 「ゆめだ! ごれば ゆべだ! ばりざは にんげんも たおじで いちばんになるんだ! ゆっくりとして おうちを てにいれるんだ!ごんな ちいさい にんげんに まげるなんで!」 『お前が山で一番なら… 人間がお前より弱いのならば、一発くらい貰っても、痛くて泣きもしない程度ってことだよな? じゃあ我慢してみろ。俺が打たれ強さを示したんだし、お前の我慢強さも示さないと、どっちが強いか決まらないぞ?』 青年は背を伸ばした。 「たおず! たおじでやる! おうちを でにいれで れいむど ずっと ゆっぐり ずるんだ!!!!」 『さあ、我慢比べだ……せーのっ 4.とあるお山の悲惨な情景 まりさは青年に背負われて山を登っている。 麓から大分経ったが、籠に収まっているまりさは声を発していない。 山道は急ではあるが、野花や木漏れ日がとても美しく、登るだけでも十分楽しく感じられた。 林道から垣間見える木のウロで、ゆっくりの親子が歌の練習をしている。 開けた原っぱでは、綺麗な宝物を見せ合ったり、子供達が追いかけっこをしている。 野生動物の棲家とは離れているのだろうか、どのゆっくりもゆっくりとしていて 青年が通りかかると挨拶をしてきたり足元にじゃれついて来たりした。 浅い小川で休憩すると まりさの親子が水溜りで浮かぶ練習をしている。 一方ありすの家族はお互いの髪を濡らして綺麗に整えてあげていた。 籠を下ろし岩に腰掛け、お弁当のおにぎりを食べていたら すぐ隣にピクニックだろうか三匹の家族が休み始めて、花やら虫やらを葉っぱの上に広げた。 昼飯を堪能しながら聞き耳を立ててみると いつもと代わり映えはしないであろう友達との出来事を 子ゆっくりが熱心に母親へと話している。 親ゆっくりは、うなづきながら ほっぺについたご飯を舐めてあげていた。 なんとなくお父さんっぽいゆっくりは早々にご飯を平らげて昼寝をしている。 余った卵焼きを子ゆっくりにプレゼントすると、帰り際に親ゆっくりにお礼を言われて別れた。 再び籠を背負ってしばらく進むと花畑に到着した。 青年は籠を開け放つとヨロヨロとまりさが這い擦り出てきた。 その姿は花畑の美しさとは縁遠い。 片目は青年のヘッドバットにより眼球が抜け落ち無残にへこんでいる。 舌は自分の前歯で噛み千切られて先端から大きく欠けてしまっている。 その前歯も青年の威力に負けてボロボロに砕けて数が足りない。 頬は青年が押さえ込んだ時にめり込んだ指が貫通したのか、いくつかの穴が開いている。 いくらか痩せこけているのは一週間ほどコンポストとして生活させられたり 雑草むしりと、その始末をさせられていたからだ。 命と同じくらい大切な帽子を取り上げられて放置された時もあった。 人間の残飯だからといって森の食べ物よりいいわけではない。 山菜や甘みを主食とするゆっくりにとって 味噌汁の残り汁や化学加工物などは毒にしかならない。 食べては餡子を吐き、まだ自分の中に戻すために吐しゃ物を食べる。 それが山から下りて来たまりさの一週間だった。 そして 「…」 這いずるまりさの視線の先には一匹のれいむがいた。 青年はまりさの後ろから声を掛けた。 『あいつが お前の相手だろ? もう山から降りてくんな、意気揚々そんな事するのはお前ぐらいだ 熊や狼だったら、即座に撃ち殺されてるぞ』 「れい……む……」 まりさは重たい体を引きずり、少しずつれいむへ近寄った。 まりさには人里に下りてきたばかりの自信も元気も山一番の体躯も既にない。 けれど黒い帽子とれいむへの想いだけはそのままだった。 「れ…い…む………れい…む……れいむ…………れいむ!…れいむ!れいむ!」 青年と競争した時とは、見る影もない弱弱しい跳躍が花畑を掻き分ける。 片目だけから流れる涙がれいむの姿をぼやかしていった。 れいむはれいむのままだった。 可愛くて優しくて時々まりさを叱ってくれるれいむ。 その元に飛び込みたい。 その瞳を眺めたい。 その頬に寄せたい。 まりさはれいむの元に帰って来た。 『…』 青年は籠を椅子にして、その様子を花畑で眺めていた。 小生意気を通り越した若いまりさが、想いを寄せていたという相手へ力を振り絞って戻っていく。 その姿を眺めているだけだ。 れいむの前に辿り尽く直前で、突然震えだしても見続けていた。 喉の奥から絞り出された呻き声が遠くから聞こえてきても。 「…れ…い…む?」 れいむはれいむのままだ。 可愛くて優しくて時々まりさを叱ってくれるかけがえのない幼馴染。 一週間も会えなくても、美しいれいむがまりさの前に居て入れた。 知らないまりさと仲良さそうに。 『…事前に、お前の帽子を持って此処を訪ねてみた すぐにお前の言ってた相手は見つかったよ そしてお前のプロポーズの結果が、コレだ』 「ゅ…ぁ……」 『お前の相手は言ってたぞ あんなに強くて困った時は助けてくれる人間さんに 傍若無人な態度をとる お前なんて理解できないってさ』 「…っ……れ…い…む…」 『本当にお前が好きで、父親抜きで迷っていたらしい でもな、別に一番じゃなくてもイイから 皆よりほんの少し自分に優してくれて 相手を気遣える利口な旦那の方がいいってよ』 「………」 れいむは人里から帰ってきたまりさに気付いた。 そして悲しい顔で一瞥するとツガイと一緒に森の奥へ消えた。 『人間様に勝てると思ったお前も馬鹿だけどな 相手を喜ばせようと考えた方法は、もっと馬鹿だったな… 人間に勝てたからなんなんだ? あんな山から離れた整地で どうやって暮らすんだよ コンポストで懲りたろ?人間の食い物なんてお前達には合わないんだよ 見てみろよ みんなゆっくりと暮らしてるじゃねーか 何が不満なんだよ 車に轢かれたり、人間の子供の玩具にされたり、コンクリートで蒸し焼きにされても お前は人間のデカイ家がほしかったのか? 人間に勝ちたかったのか?』 「…」 青年と力比べをしている最中 一度も落とさなかったまりさの帽子が そよ風に吹かれて花畑を転がった 『何よりも一番を目指して頑張っていたようだけどな お前の相手の側にいた、今の連れを見たか? 狩りも跳ねるのもお前よりは 下手かもしれないな けれど相手の側にいてあげる事と、相手を思いやる事は一番だったかもな』 青年はまりさに帽子を被せてやった。 『お前の仲間に言っておいたよ お前が死なないようにゆっくりさせてくれってな ボロボロの姿でも嫌わないように、嘆いて自ら命を投げ出させないようにな 喜べ、お前はずっとお前の告白した相手の傍で生きられるぞ みんな善良そうだな、喧嘩のケの字も感じない イイ奴らじゃないか 確かにお前の様な奴には誰も敵わないな』 「…」 『利口になったな お前は人間より弱いんだ 他の奴らは人間の事なんて知識として知ってる程度だろうが お前は身をもって知ることが出来た、良かったな』 「…」 『もしも山を下りないで人間の差も知らない馬鹿のままだったら… なあ、馬鹿のままは嫌か? 馬鹿のままだったら お前は あの相手と結婚して五体満足いつもどおりの暮らしだったはずだ それ、嫌か?』 「…」 『なあ、馬鹿のままは嫌か?』 まりさは群れの仲間から施され寿命が尽きるまで生きた。 幼馴染れいむが訪ねてくる事は一度もなかったが、申し訳なさそうにれいむの旦那が度々やって来た。 人間がどれだけ強いかどうか、そんな事をまりさに聞いてくるゆっくりなど一匹もいなかった。 by キーガー・フレテール 挿絵 byM1 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る なんて優しいお兄さんなんだ -- 2021-10-16 20 34 45 優しいお兄さん…まりさは高い授業料払ったね、あれだけボロボロになったまりさをも迎えてくれた群れの仲間たちに感謝すると良いね -- 2019-07-30 20 07 14 なんて優しいお兄さん -- 2018-03-06 18 49 16 DIO「素晴らしいよ君、ところで、もっと、力が、欲しくないか?この矢で、君に、新の力を、産み出してやろう。」 -- 2014-11-12 22 05 42 ブロリー「この程度で人間に勝てるとおもっていたのか。所詮、くそぶくろはくそぶくろなのだ。」 パラガス「その気になっていたお前(ゆっくり)の姿はお笑いだったぜ。」 -- 2014-10-08 01 58 13 ↓幼稚じゃなくてやさしいだけじゃないか? 普通なら潰して終わるとこをわざわざ茶番に付き合ってるんだし -- 2014-07-26 20 35 56 優しいお兄さんではあるけど、幼稚過ぎるというか そんなだから仕事に就けないんだよwwwwwww -- 2013-10-18 00 49 48 魔理沙を悪にできないって思いっきり悪やないか -- 2012-07-16 10 28 47 諦めないっていう事はいつも美徳とされるけど 絶望的な力の差を見せつけられても理解できない奴が生きていられるのは運がいいだけなんだよね。 この青年は超がつくほどの暇人だが、心の広さが半端じゃないな。いちいち怒ったりせずに何度でも教え諭す様は 常人に真似できない領域に達している。 虐待するわけでもなくごく普通の人間の感覚で ゆっくりの中でも相当な馬鹿の部類でさえ理解できるように敗北感を 与えたところが痛快で、すっきりしたよ。 を与えたのは最高だった。 -- 2012-06-12 18 26 16 恋は盲目ってやつか -- 2011-09-18 20 48 03 ↓↓ジョジョ立ちw 確かに似合いそうだなwww -- 2011-09-18 20 47 20 面白かったです!! -- 2011-06-04 03 40 42 このお兄さんはジョジョ立ちするべきだw きっと似合うwww -- 2010-12-31 02 43 47 このお兄さん良いね~。力の差を教えるくだりが面白かったです。 -- 2010-12-25 10 56 19 つうかなんでれいむは尽くされる側なんだ?w -- 2010-12-16 21 36 59 とても優しいお兄さんだったな… 人のおうち奪おうとするげすまりさ相手に優しすぎるぜ… -- 2010-10-13 21 41 56 うーん、できたお兄さんだなあ -- 2010-08-19 07 43 01 良い鬼威山だなwww -- 2010-08-15 16 48 32 なんかゲスって感じでもないね。 すっきり!!!したけど。 -- 2010-08-11 06 54 57 すっきりー!! -- 2010-06-26 21 27 58
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ノーマル ハルーラのページ たいりょく こうげき ぼうぎょ とくこう とくぼう すばやさ ハルーラ 105 95 80 40 80 90 メガハルーラ 105 125 100 60 100 100 メガハルーラ ふぇぇ、ハケモンのなかのハケモン、さいきょうのハケモンといってもかごんではないんだよ。 とくせいがよわくなっちゃったけどまだまだハケモンとしてじゅうぶんなちからはもってるよぉ *4 なし *2 かくとう *1 それいがい *1/2 *1/4 *0 ゴースト メガシンカまえの、とくせいだよ すいしょう/ひすいしょう とくせい かいせつ、こうか ややひすいしょう はやおき あまりつかうばめんはないかも(ねむりのけいぞくターンがほんらいのはんぶんになっちゃうんだよ) すいしょう きもったま ゴーストこうかんよみで、グロパンがうてるから、よみしだいでは、ヤミラミ、パンプジン、デスカーンがかれるんだよ……たぶん(ゴーストタイプにノーマルとかくとうタイプのわざがあたるようになるんだよ) ひすいしょう (ゆめ)せいしんりょく ふぇぇ……あまり、やくに、たたないよ(ひるまないんだよ) メガシンカご おやこあい すべてのわざのいりょくが1.25ばい、ついかこうかのかくりつもあがる……ふぇぇ、おにつよだよ(こうげきわざをしようしたあと、1/4のいりょくでもう1どおなじわざがだせる) きほんのかた どうぐ とくせい せいかく メガストーン きもったま→おやこあい ようきorいじっぱり どりょくち はいぶん AS252 わざ タイプ ぶんるい いりょく めいちゅう ぴーぴー こうか(・もくてき) かくていわざ - せんたくわざ おんがえし ノーマル ぶつり 102 100 メインウェポンだよ からげんき ノーマル ぶつり 70(140) 100 おにびたいさくだよ。やけどのこうげきはんげんをむこうかするよ いわなだれ いわ ぶつり 75 90 51パーセントであいてをひるませるよ、あいては2かいに1かいしかこうどうできないよ グロウパンチ かくとう ぶつり 40 100 こうげきにだんかいあっぷだよ、ふぇぇ じしん じめん ぶつり 100 100 あるとべんりなサブウェポンだよ……つかいやすいけど、かりょくはそこまでないよ かみくだく あく ぶつり 80 100 こうかんよみきもったまグロパンとあわせておばけたいじができるよ。でもふいうちとまようよ。じみにあいてのぼうぎょを36%のかくりつでさげるよ ふいうち あく ぶつり 70 100 べんりなせんせいわざだよ。ゴーストにもささるけど、すかされやすいよぉ…… ねこだまし ノーマル ぶつり 40 100 あんぜんにメガシンカできるよ。でもわざすぺがきびしいよ。そしてゴーストにかえられやすいからはんようせいはひくいよ。でもあいてにゴーストタイプがいないならとてもべんりだよ だいもんじorかえんほうしゃ ほのお とくしゅ 11090 85100 からげんきをさいようしないなら、やけどたいさくや、たいぶつりうけにたいしてゆうようだよ。19パーセントでやけどだよ。こうげきがとくこうのばいちかくちがうから、はんようせいはひくいかも れいとうビーム こおり とくしゅ 90 100 ドラゴンたいさくだよぉ。19%であいてはこおるよ シャドーボール ゴースト とくしゅ 80 100 15 るんるんきぶんでうけにきたゴーストをやっつけちゃうよぉ……もうやけどなんてこわくないよぉ……36%であいてのとくぼうをさげるよ じならし じめん ぶつり 60 100 20 あいてのすばやさを、2だんかいさげるよ。ほとんどのあいてをぬけるようになるけど、わざスペきびしいよ。ハルーラよりはやくて、ハルーラのこうげきを1ぱつたえるひこう、ふゆういがいポケモンようだから、はんようせいはひくいよ がんせきふうじ いわ ぶつり 60 95 10 じならしとちがって、むこうにされず、あいてのすばやさをにだんかいさげるよ。でもたまにはずれるよ。ようとはぜんぜんちがうけど、いわなだれのほうがきょうりょくだよ みがわり ノーマル へんか - - 10 おもにおにびやじょうたいいじょうよけでつかうよ。またあいてのこうかんをよそうしてようすみで。でもやっぱりわざスペきびしいから、おにびたいさくだけなら、からげんきのほうがいいよぉ…… メガトンキックはありえるかなぁ…たぶんエメラルド産限定なんだよぉ… すてみタックルとちがってはんどうはないけど、めいちゅうがあんていしないからオススメしないよぉ あとかんじよめないよぉ… たちまわり グロウパンチでこうげきをあげて、ぜんぬきをめざすよ。 わざこうせいと、よみしだいでは、あらゆるポケモンにあとだしをゆるさないよ。 むりにつっぱって、はんようせいをさげるよりは、おにびもちのゴーストタイプをみたら、すなおにこうかんしたほうがいいんだよぉ…… やっぱり、おにびもちのゴーストが、いちばんのてんてきかも。 あいてにゴーストタイプのポケモンがいるときは、いきなりメガシンカしないほうがいいかもぉ…… とくしゅがたもあるけど、そこまでつよくないんだよ(かんかくまひ)。よわくはないけど。 こうげきとっかでやけどたいさくでもからげんきいれたほうが、はんようせいはたかいんだよ。 ふぁぁ、ねむいよう
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・れいむが死にません。 ・エロくありません。 ・最近れいむいじめがひどかったんで、れいむ愛でモード突入中。 ・仕事の都合もあって製作ペースが戻らないので、まだまだリハビリが必要な感じです。 『飼いゆっくりれいむ』 D.O 我が家は、築100年を軽く超える古風な木造家屋である。 爺さんの若かった頃は農業をしていたとのことなので、蔵もあれば庭もあり、 さらにその周囲は生垣をはさんで小さな林まで広がっている。 外から見れば、歴史の重み、どころか幽霊屋敷の雰囲気漂わせていることだろう。 現在の主である私が手入れを怠っているので、庭はコケと背の高い雑草が生い茂り、生垣も所々穴が開いているからなのだが。 私が子供の頃は、周囲にまだ多くの農家も残っていたが、 十年ほど前に、ゆっくりの大規模な襲撃が起こり、すっかり疲弊してしまったようである。 もう少し山に近い田舎に立ち上がった、のうかりんを使った実験農場計画が始まった頃に多くの農地は売却され、 実験農場が順調な現状を考えると、このあたりも数年後にはのうかりん印の農場になりそうだ。 現在では町、というには空き家が多すぎる、少々寂しい地域となってしまっている。 そんなある日、仕事から帰ってみると、 庭にサッカーボールサイズと、テニスボールサイズの饅頭が一つづつ落ちていた。 日が暮れているので良く見えないが、赤白リボンの奴はたしかれ・・・れ?ゆっくりだ。 「ゆゆっ!おにーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇっ!」 「・・・・・・。」 家の電灯に照らされてみれば、薄汚れていて何ともゆっくりしていない奴等である。 少なくとも、見ているこちらとしてはゆっくりできない。 親子なのは間違いなさそうだが、親の方は全身余すところ無く、 マジックで唐草模様が描き込まれているあたり、町からやってきたのは間違いないだろう。 「にんげんさん、れいむはしんぐるまざーなんだよ!」 「へぇ・・・。で?」 「かわいそうなれいむたちを、ゆっくりかっていってね!」 「きゃわいくってごめんにぇっ!」 「・・・はぁ。」 なんだか、やり遂げた表情でこちらを見ている。 刈って、狩って、・・・いや、飼っていってね、か? どうやら、こんなにゆっくりしたおちびちゃんなんだから、人間さんも飼ってくれるに違いない、ということらしい。 とりあえずサンダルの裏を、その自信満々の顔面に押し当てて、塀の方に転がしてやることにした。 「ゆべしっ!」 「ゆぴぃぃいい!」 「・・・ペッ!」 噛んでいたガムが母れいむのリボンにジャストミートする。 「・・・・・・飯作ろ。」 別にゆっくりとやらに大した関心はない。 単に、コソコソ隠れているなら可愛げもあるが、ずうずうしさが気に入らなかっただけである。 これまでも野良猫やらなんやら、しょっちゅう仮の宿に使われていたので、 今更ゆっくりが庭に舞い込んだところで気にしない。 糞をばら撒かれないだけ、犬猫よりはありがたいくらいだ。 庭に住みたきゃ勝手に住めばいい。 こちらには当然世話する義務なんぞ無いのだから。 「ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛・・・・」 「ゆっくりー!」 痛みから回復したれいむ親子の方は、感動に打ち震えていた。 なにせ気がついたら、母れいむのリボンにペタリとついているのは、あの憧れの飼いゆっくりバッジ。 れいむも遠くで見ていたときは気づかなかったが、バッヂがまさか人間さんが口から吐き出されたものだったとは。 まあ、自分達もナワバリ(無意味極まるが)にしーしーでマーキングすることは多いのだから、そういうものなのだろう。 ・・・などと考えながら、リボンにへばりついたガムを、嬉し涙に潤んだ目で眺めていた。 そう、れいむはついに、ゆっくりの中でも最もゆっくりできると言われる、 あの飼いゆっくりにしてもらえたのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 翌朝。 便所から出て縁側を歩いていると、庭の隅に放置していた木箱から、れいむ親子が飛び出してきた。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ん?まだいたか。」 朝からうるさい奴らだ。やはり猫の方がましだな。 「ゆーん。おにーさん、れいむたちにあさごはんちょーだいね!」 「ちょーらいにぇっ!」 昨日のゆっくり共が、これから仕事に行くという時に、なんだかずうずうしくゆぅゆぅ鳴いている。 「・・・・・・庭の草でも花でも、自分で適当に食え。」 「ゆゆっ!?おはなしゃん、たべちぇいいにょ?やっちゃー!」 「ゆーん、ごはんさんいっぱいだよ~。」 勝手に住むのはかまわんが、ゆっくりフードたら言うものまで買ってやる気など無い。 というか、ペットでもないのにいちいち飯などやらん。 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー。」 「むーちゃ、むーちゃ。ゆ・・ゆぇーん。」 「どうしたの、おちびちゃん。」 「れいみゅ、こんにゃにむーちゃむーちゃちたの、はじめちぇ。」 れいむ達は、飼い主であるおにーさんの愛情を全身で味わっていた。 なにせ、適当に食え、と言って指差した庭には、 柔らかそうなゆっくりした草、 タンポポやシロツメクサの類の雑草寄りの花、 背の低い木には実や柔らかい葉っぱ、 それに、今は何も成っていないが柿やビワの木も生えており、季節が来たら食卓を飾ってくれることだろう。 当然昆虫やミミズも、その気になれば取り放題だ。 ここは、森の中にあったとしたら、数十匹のゆっくりを余裕をもって支えることができる最上級の狩場であった。 それらが全て、この2匹だけのためのごはんだと言うのである。 「おにぃさぁん、ありがとぉぉぉおおおぉぉ。」 そんなある日、夕食の生ゴミを袋に入れて、裏庭のポリバケツに入れようとしたところ、 ゆっくり共が、よだれを滝の様にたらしながらこちらを見ていた。 ・・・・・・そういえば、今都会では『ゆっくりコンポスト』なるものがはやっていると聞く。 正直言って生ゴミを貯めこむのは嫌だし、こいつらでも使ってみるか。 「・・・食え。」 翌朝、袋の中身がきれいさっぱりなくなっていた。 袋に何かが入っていた形跡すら無い。よだれらしきものでベタベタではあるが。 「ゆっくちちたおやさいしゃんだったにぇっ!」 「おにーさんにありがとうってするんだよ。」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 「なるほど。こいつは便利だ。」 それからというもの、あの親子は毎日ポリバケツに放り込むはずだった生ゴミを、おやつだと大喜びで食べている。 生ゴミを放置しすぎて増えていたりぐるとかも減った。 生ゴミがなくなったからか、りぐるも食べているのか・・・ しばらくすると、いちいちこいつ等が『おうち』とやらにしている、庭の隅の木箱まで生ゴミを持っていくのもめんどくさくなってきた。 まずは縁側の下に少し穴を掘り、用済みとなったポリバケツを横倒しにしてはめ込む。 ポリバケツの内側に土をいくらか入れ、周囲の穴との隙間にも土を詰める。正面から見るとパッと見トンネルのような感じだ。 あとはあのゆっくり親子を中に放り込んで、自家製コンポストは完成。 「ゆわーい。きょきょはれいみゅたちのおうちなんだにぇ。」 「ゆっくりー!おにーさん、ありがとう!」 なんかぽいんぽいんと跳ねて喜んでいるが、台所からも食卓からも近いここが、 生ゴミを放り込むのに適していただけだ。 「ん、で、あと何が必要だ?」 「「ゆぅ?」」 なんといっても、使い道ができた以上、もはや野良猫と同等ではない。 金をかけてやるつもりはないが、それなりのメンテナンスはしてやろう。 コンポストとしてある程度長持ちしてくれなければ困るからだ。 「ゆ、ゆぅーん!れいむはみずあびができたらうれしいよ。きたないとゆっくりできないよ。それと・・・」 「それと?」 「おちびちゃんにも、ばっじさんがほしいよ!おちびちゃんもかいゆっくりのばっじさんがほしいよ。」 水浴びか。なるほど、こいつ等が饅頭のくせにカビないのは不思議だったが、やはり不潔にしておくのはよろしくないといったところか。 こっちとしても軒下にサッカーボール大のカビ饅頭があるのは気分が悪い。自分たちで清潔にしてもらおうか。 あとは・・・ん?おちびちゃん・・・にも? ・・・・・・妙に馴れ馴れしいのも合点がいった。まさか飼われているつもりだったとは。 まあ、使い道がある今となっては都合がよくもあったが。 「水は、そうだな。このタライに水を入れといてやる。勝手に使え。」 「ゆっくりー!」 「それと・・・バッジねぇ。ああ、あれでいいか。」 持ってきたのは、私が中学生時代に学生服につけていた、襟章だった。 鈍く銀色に光る襟章、どうせこいつ等がバッジとやらを活用する日は来ないのだから、これで十分だ。 リボンに乱暴にネジ式の襟章を突き刺して固定すると、赤色の中に鈍く光る銀色は、思いのほかしっくりときた。 「ゆわーい!ゆっくちちたばっじしゃんだー!」 「ゆぅぅ、よがっだねぇ、よがっだねぇぇえ、おぢびじゃぁぁああん。」 喜んでもらって何よりである。この調子で雑草むしりと生ゴミ処理を頑張ってもらいたいものだ。 翌日には、縁側下のコンポストの近くに「おといれ」と称してうんうん用の穴も掘っていた。 生活の場に排泄物を置いておくのはやはり嫌なのか。だが、これはこちらとしても都合がよかった。 このうんうんという排泄物については、定期的に土と雑草に混ぜて花壇の肥料にしている。 なかなか良質なようで、しかも採集の手間も要らないしありがたいものだ。 「ゆーん、おにーさん。おといれのおそうじしてくれてありがとう。」 「うんうんがなくなっちぇ、ゆっくちできりゅよ。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− こうしてれいむ親子がコンポストとなった数日後、家の庭に最近ご無沙汰だった来客が来た。 「ねこさんだぁぁあああ!ゆっくりできないぃぃぃ!!」 「ゆぴぃぃ、おきゃあしゃんこわいよぉぉ!」 「ん、ああ、トラか。久しぶり。」 生垣の穴から庭に入ってきたのは、近所で気ままな野良生活を送っている猫だ。 こいつに限らず、我が家を通り道にする猫は多い。 「ゆぁぁぁぁ、おにーさぁぁん。ねこさんこわいよぉぉぉぉ。」 「ゆっくちさせちぇぇぇぇ。」 「・・・嫌なら自分でなんとかしろ。」 「「ゆぅぅぅ、ゆっくりできないよぉ。」」 別にサッカーボールサイズの良くわからん物体にじゃれつく様な、酔狂な猫達でもないが、 町生活でトラウマでもあるのか、度重なる猫の襲撃に、れいむ親子は自分達で何とかすることにしたようだ。 数日後から、徐々にだが、目に見えて生垣の穴がふさがり始めた。 「ゆーえす!ゆーえす!」 「おきゃーしゃん、はっぱしゃんもってきちゃよ。」 「じゃあおちびちゃん、このすきまにはっぱさんをおしこんでね。」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 生垣や塀の隙間に、小石を詰め、小枝を刺し、上から土を盛って、また葉っぱや枝を詰める。 近くで見るとやはり幼稚園児の工作の域を出るものではないが、遠目には生垣に溶け込んで見えなくも無い。 何重にもゴミを積み上げているので、強度のほうはちょっと蹴りを入れたくらいでは吹っ飛ばないくらいになっていた。 「これでねこさんはいってこれないね!」 「ゆっくちー。」 「にゅぁ~ん・・・ぐるるる。」 ・・・・・・。 「「どぼぢでねござんはいっでるのぉぉぉおお!?」」 「・・・塀の上からだろ。」 まあ一応は通りにくくなったので、特に頻繁にここに来る数匹以外は入ってくることも無くなり、 多少は平穏になったようだ。 それにしても、なんだか最近庭がきれいになってきた気がする。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 生垣の穴がれいむによってあらかた埋まった数日後、 久しぶりに友人が家まで遊びに来た。 「ゆゆっ!?おにーさんのおともだち?ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇ。」 「おー、間知由。お前ゆっくり飼ってたんだな。エラい装飾過剰だけど。」 「いや、飼ってないし、あの唐草模様は来たときからだ。俺の趣味じゃない。」 「ふーん。つってもバッジついてんじゃん。」 「ありゃガムだ。」 「え゛・・・。」 「ああ、みかんの皮は庭のポリバケツに放り込んどいてくれ。」 「え?これってこいつらのおうちだろ?」 「いや。コンポスト。」 「んー。・・・え゛ぇ?」 「ゆわーい、おやつだにぇ!ゆっくちありがちょー。」 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー。」 ついでに、夕食の魚の骨も放り込んでおいた。 「ぽりっ、ぽりぽりぽり・・・ゆっくりー!」 「・・・・・ふーむ。」 「どうした?」 「いや。ゆっくりって、案外飼いやすい生き物なのだろうかと思ってな。」 「ただの饅頭だろ。・・・・・・何だよ、その目は。」 「まったく。世の中にはどんだけ愛情注いでも懐かれない奴もいるってのに。」 「そんなもんかね。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そして、庭が放置しっぱなしの幽霊屋敷状態から、見違えるようにきれいになった頃、 れいむ達の平穏な毎日に、突然不幸が舞い降りてきた。 「Zzzzzz・・・。」 「すーや、すーや。」 今日は日曜日。おにーさんも日当たりの良い縁側で昼寝中。 れいむ親子も庭に生えた木の木陰でゆっくりと惰眠をむさぼっていた。 そのとき庭に、普段と違う空気が漂う。 「うー。」 「ゆぅ?・・・すーや、すーや。」 「あまあまー。」 「ゆ・・・すーや、すーや。・・・・・・れみりゃだぁぁぁああああ!!!」 庭に突然飛来したのは、本来夜行性のれみりゃ(胴無し)。 庭のすぐ奥にある林は、昼でも薄暗く、たまに昼でも活動するれみりゃが現れたりする。 しかも、このあたりは農家だったこともあり、害ゆ対策として、れみりゃを大量飼育していた時期もあったので、 最近森の奥でしか見なくなったれみりゃ種もチラホラいたりするのだ。 「おちびちゃん、ゆっくりにげるよ!」 「ゆあーん。れみりゃはゆっくちしちぇにぇ。」 ぽよん、ぽよん、と大急ぎでおうちに飛び込むれいむ親子。 れみりゃは追ってこなかった。どうやら助かったようである。 しかし、一つだけ気がかりがあった。 「ゆぅぅぅ、おきゃーしゃん、れみりゃはゆっくちできにゃいよぉ。」 「ゆ!おちびちゃん。ここはおにーさんがつくってくれたおうちだから、れみりゃなんてはいってこれないよ!」 「ゆっくちー。でみょ・・・。」 「おちびちゃん?」 「おにーしゃん、すーやすーやしてたよ?れみりゃにゆっくちひどいことされてにゃい?」 「ゆゆっ!?」 「そろーり!そろーり!」 おにーさんの無事を確かめるべくおうちから慎重に這い出るれいむ。 見つかったら命はないだけに、そろーりそろーりにも力が入る。 そして、れいむは驚愕の姿を目撃した。 「うー!うー!」 「Zzzzzz・・・・、じゃま・・・」 ・・・・・・れみりゃがおにーさんにじゃれていた。 「ゆぁぁぁああああ!おにーさんがたべられるぅぅぅううう!!!」 「うー?」 「やめてねっ!おにーさんをたべないでねっ!れみりゃはゆっくりどっかいってね!!」 ゆっくりしたおにーさんを助けるべく、れいむはれみりゃに立ち向かう。 しかし、口にくわえた木の枝をどれほど振り回しても、空を舞うれみりゃ相手には届かなかった。 「ゆぅ、ゆぅぅ、どうしてとどかないのぉぉ。」 「うー!あまあまー。がぶり。」 「ゆひぃぃぃぃ、れいむのあんこさんすわないでぇぇぇぇ・・・。」 「おきゃあしゃぁぁあん、ゆっくち、れみりゃはゆっくちしちぇぇぇぇ!」 「お、肉まん。」ぱさり。 「うー!うー!」 といったところで目が覚めたおにーさん。 玉網を使ってあっさりとれみりゃを捕獲したのであった。 それにしても、生ゴミを処理して肥料を作り、 庭の管理までやってくれた挙句、夕食のおかずをおびき寄せてくれるとは、 つくづく使いでのあるコンポストだ。 つい今さっきまでたっぷり飯を食っていたこの肉まん、中身がが詰まっていてうまそうだな。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 「おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇぇぇぇ。」 ザックザックザック 薄っぺらくなった方のれいむには、中身を詰めなおしてやることにする。 掘り出したのは、「おといれ」とやらになみなみと貯められた餡子。 こいつを、中身の減ったれいむの口からねじ込んでやることにした。 「ゆ゛っ、ゆぼぉっ!おにーざん、やべでぇ、ゆっぐぢでぎなっ!ゆぼっ!」 「おにーしゃん、やめてあげちぇにぇ!おきゃーしゃんがいやがっちぇるよ。」 無視。餡子は餡子だ。多少土が混ざっているが、中に詰めなおしてやれば問題ないだろう。 「ゆ゛っ、ゆっぐぢしていってね。ゆげぇ。」 「やっちゃー!おきゃーしゃん、げんきになっちゃよ。」 「ゆ、ゆぅぅ・・・おにーさん、ありがとぉ・・・。」 「しゅーり、しゅーり、ちあわちぇー!」 ふむ、消耗してはいるが、まだ当分は使えそうだ。 そして、その夜は多すぎて食べきれなかった肉まんの残りを、コンポストに放り込んでやった。 やはり一人暮らしにあのサイズは無茶な話だな。 「ゆわーい。きょうはごちそうだにぇ!」 「ゆーん。きっといっしょにれみりゃをやっつけたから、ごほうびなんだよ。」 「ゆっくち!ゆっくち!」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そんな生活が、しばらく続いたが、 子れいむが成体にまで大きくなった頃、親れいむの方が死んだ。 あとで調べたが、町の野良の寿命は平均一年かどうかと、大分短いらしい。 我が家に来た時には中古のポンコツだったということか。 「お・・・おにーさん。おちびちゃんを、・・・これからもゆっくりさせてあげてね。」 「特になにも変らんよ。」 「おちびちゃん、・・・ゆっくりしていってね・・・・・・」 「おかーしゃん、おきゃあしゃぁぁぁあああん!!!すーりすーりしてね、ぺーろぺーろしてねぇぇえええ!!!」 リボンは子れいむの方が欲しがったのでくれてやり、死体のほうはぐちゃぐちゃにすり潰して肥料にした。 花壇の花も元気に育つことだろう。 「おかーさん。おはなさんになったんだね。」 「まあそうとも言えるな。」 「ゆっくりしていってね。おかーさん。」 まあ、そんなことはどうでも良かったのだが、少し問題が生じてきた。 コンポストの、生ごみ処理能力が落ちてしまったのだ。 「ゆぅぅ~。さびしいよぉ。」 「おちびちゃんがほしいよぉ。」 「すーりすーりしたいよぉ。」 どうも孤独な生活と発情期が重なって、ノイローゼ状態になったらしい。 頭数が減ったうえ、どうにも食欲が無い。庭の雑草もまた伸び始めてきた。 これは、新しいゆっくりを取ってくる必要がありそうだな。 その日、夕食の生ゴミをコンポストに放り込みながら、 れいむにつがいを探してやる、と言った時のれいむの喜びようは大変なものだった。 体が溶ける寸前まで水浴びをして、リボンのしわ一つ一つまで丹念にあんよでつぶして伸ばしていく。 コンポスト内の清掃も丹念に行い、 さらに子供が出来た後のために、花やイモ虫、果物の皮などのごちそうから保存食の干し草まで貯めこむ。 にんっしん中のベッドまで葉っぱと草を使って作り終えて、準備万端でその日を迎えた。 約束の日、私はれいむを連れて街を歩き、れいむ的に「すっごくゆっくりしてる」まりさを手に入れた。 この白黒饅頭、帽子にアイロンをかけた形跡もわずかにあり、恐らくバッジを引きちぎったのであろう傷痕も見られる。 飼われていたというなら、それなりの躾もされているのだろう。好都合だ。 「ゆふん!そんなにまりさをかいたかったら、かわせてやってもいいのぜ。」 「ゆっくり!まりさ、ずっとゆっくりしようね!」 「ゆん!なかなかゆっくりしたれいむだから、とくべつにすっきりしてやってもいいのぜ。」 本人も乗り気のようだから都合よい。つがいにしてやることにして、家に連れていった。 「ゆぅ~ん、まりさ。すーり、すーり。」 「ゆへぇぇ!いいからとっととまむまむをむけるのぜぇ!『ぼよぉぉおん!』」 「『ごろんっ』ゆぅ!?もっとゆっくりしてぇ!」 「しったこっちゃないのぜ!まりさのぺにぺにをおみまいしてやるのぜぇ!!」 ずぼぉっ!ずっぽずっぽずっぽずっぽ・・・ 「ゆぁーん、いだいぃぃぃい!らんぼうすぎるよぉ。もっと、ゆっぐりぃ!」 「ゆっふっ!ゆっゆっゆっゆっゆっゆっすっきりぃぃぃいいい!」 「ずっぎりぃぃ。」 とりあえずれいむの腹が膨れてきたので、予定どおりにいったようだ。 「ひどいよまりさ・・・」 「ゆふぅ。ひとしごとおわっておなかがすいたのぜ。にんげんさん、とっととごはんをもってくるんだぜ!」 「その辺のを適当に食え。」 「ゆゆ!?なにいってるのぜ。ゆっくりふーどさんなんて、どこにもないのぜ。」 「草があるだろ。」 「な・・・なにいってるのぜぇぇ!くささんはごはんじゃないのぜ! ふーどさんがないならけーきさんでもいいのぜ!はやくもってくるのぜ、くそじじぃ!」 「ゆぅ。なにいってるの?おにーさんにあやまってね。くささんはおいしいよ。むーしゃむーしゃ。」 「ゆぎぃぃぃいい!もういいのぜ!はやくおうちにいれるのぜ!べっどですーやすーやするのぜ!」 「そこに家ならあるだろ。」 「な・・・なにいってるのぜぇ!これはごみばこさんなのぜ!くさくてきたないのぜ!」 「ひ、ひどいよまりさ!おにーさんがれいむにくれた、ゆっくりできるおうちだよ! それに、れいむがいっしょうけんめいおそうじしたんだよ!ゆっくりあやまってね!」 「・・・いいよ別に。文句があるなら勝手に出ていけば。」 「ゆふん!まったく、ばかなじじぃとゆっくりしてないごみれいむのほうが、このおうちからでていくのぜ! ゆっくりしたまりささまが、とくべつにこのおうちをつかってやるのぜ!」 「ふーん・・・。れいむ、どうやら一緒に暮らすのは無理そうだが。」 「ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくりできないまりさだよぉ。」 とりあえず、私が家から追い出されるのは嫌なので、ゆっくりしたまりささまとやらは、門から丁重に出て行ってもらった。 あれだけ態度がでかいと、野良をやっていくのも大変だろうに、大したものだ。 しかし、ゆっくりと言っても、コンポスト向きのとそうでないのがいるのかもしれない。 黒帽子がダメなのか、飼われていたのがダメなのか、まあ、どうでもいいことだ。 れいむの腹にいるちび共の中に黒帽子がいたら、それもはっきりするだろう。 つがいこそいなくなったものの、孤独を埋めるという当初の目的は達成されたようである。 それから数匹分の食欲を発揮し始めたれいむは、3週間後、無事れいむ種一匹とまりさ種一匹を出産した。 赤ゆっくりが腹から射出される勢いには驚いたが、庭は柔らかい芝生であったのが幸いしたのか、 せっかくれいむが作っていた草のクッションから1m以上離れて着地したものの、つぶれることはなかった。 「「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!!」」 「ゆっくりしていってね!ゆぅーん、ぺーろぺーろ、おちびちゃんたちかわいいよぉ。」 これで、コンポストの方は今後も安泰そうだ。 母れいむがチビ共にもバッジが欲しいとか言ってきたので、画鋲のカサの部分をセメダインでくっつけておく。金バッジだ。 これで満足して生ゴミを処理してくれるのだから、安上がりなものだ。 ちなみに、ゆっくりしたまりささまに出て行ってもらってから二日後、門の前にみすぼらしく、 帽子もかぶっていないまりさ種が一匹転がっていた。 「やっばりがっでぐだざぃぃ・・・おねがいじばずぅ。」 とか言っていたが、ゆっくりを飼う趣味などないので、無視しておいた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− それからしばらくは、コンポストとしても庭の芝生管理としても特に問題はなかった。 ピンポン玉サイズの子供たちでは、成体一匹分の処理能力を補えるかと、多少不安ではあったが、 どうやら、成長中のチビ共の方が食欲は旺盛らしく、生ゴミは毎日順調に処理され、肥料になっていった。 黒帽子の方も特に文句を言わず、生ゴミをムシャムシャ食らい、庭をぽよんぽよんと跳ねまわっている。 やはりあの態度は、育ちが問題だったようだ。 だが、赤ゆっくり達が産まれてから一月ほどたち、そろそろ冬の近づきを肌で感じ始めた頃、 またしてもコンポストの性能が低下してきた。 朝、コンポストの中をのぞいてみると、まだ昨日の生ゴミが残っている。 さらにその奥では、歯をガチガチと鳴らしながら、目の下にクマをつくったれいむ一家がいた。 「お、おおお、おにーさん、おうちがさむいよぉぉぉ・・。ねむれないよぉぉ・・。」 「しゃむくてゆっくちできにゃいぃぃぃ。」 「ごはんしゃんつめちゃいよ。むーちゃ、むーちゃ、しょれなりー。」 コンポストはれいむ達なりにきっちり入口を塞いでいるが、やはり所詮はポリバケツ。 まだ昼間は温かいが、壁一枚隔てた向こうの、夜の寒気を完全に防ぐことはできないようだ。 この時期でこれでは、冬の間はコンポストの機能が完全に停止しかねない。 家に入れるという選択肢はもちろんないが、 本格的にコンポストの改造を行う必要がありそうだ。 その日の昼、れいむ一家に『たからもの』とか言う小石や押し花や、ガムの付いたリボンらしきゴミをコンポストから出させると、 大規模な改装に取り掛かった。 まずは、ポリバケツを掘り出して、横倒しにすると天井になる、壁の一部を四角く切り抜く。 それに、ちょうつがいと留め金をつけて、外から開けるようにした。 ゆっくりは、冬には巣の入り口を密閉するらしいので、生ゴミの投入口をつけてやったわけだ。 次にバケツの入口、つまりゆっくりの出入り口だが、せいぜい直径30cm程度のゆっくりに対しては大きすぎる。 壊れたすのこを材料にして、ドーナツ状の板をつくり、バケツの口に取り付けてやった。 これでゆっくりの出入り口は、必要最低限の大きさになり、 木の枝などで塞ぐ手間も、寒気の吹き込む隙間もぐっと減るはずだ。 あとは、再び縁側の下にポリバケツを埋めなおし、これまではむき出しだった側面にまで土をこんもりと盛っておく。 外から見ると、生ゴミの投入口と、ゆっくりの出入り口だけ穴のあいた、砂場の砂山のような外観となる。 縁側の下なので、雨風で盛り上げた土が崩れる心配は無い。 地下は冬でも暖かいというので、これで断熱は十分だろう。 数十分の作業中、庭で遊ばせていたれいむ一家を呼び寄せた時の反応は、 以前コンポストを、はじめてつくった時以上のものであった。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆわぁぁぁぁああい!すっごくゆっくりしたおうちだよぉぉおおお!」 「ゆっくち!ゆっくちー!れいみゅたち、こんなゆっくちしたおうちにしゅんでいいにょ!?」 「ゆわーい!なかもあっちゃかいよー!ゆっくちー!」 「ふーい、疲れた。あとはこいつでも中に敷いとけ。」 「ゆぅぅぅぅうう!しゅごーい!ゆっくちちたおふとんしゃんだー!」 「おにぃさん、ありがと、う、ゆぇぇぇええん!」 「おきゃーしゃん、ないちぇるにょ?どっかいちゃいにょ?ゆっくちしちぇにぇ。」 「おちびちゃぁぁあん!れいむはうれしくってないてるんだよぉ。ゆっくりー、ゆっくりー!」 近所の農家から頂いてきた干し藁をひと束くれてやっただけだが。 とりあえず、この反応からして、今後はまたコンポストとして元気にやってくれそうだ。 こちらはやることやったので、あとのメンテはこいつ等がかってにやってくれればいい。 かつて母れいむと一緒に野良生活を送っていた頃、れいむには夢があった。 温かくて、雨の心配も、風の恐怖も感じないですむおうち。 毎日お腹いっぱい食べられるだけのごはん。 しかも、そのごはんを手に入れるために、命の危険など感じずにすむゆっくりプレイス。 外敵の心配もないそのゆっくりプレイスで、 ゆっくりしたおちびちゃん達とすーりすーりしたり、のーびのーびしたり、 おうたをうたったり、水浴びですっきりーしながら、毎日ひたすらゆっくりする。 夜になったら、ゆっくりしたおうちに帰り、ふかふかのおふとんの中で、 家族で肌を寄せ合ってすーやすーやする。 たまにはあまあまが食べられたら言うことはない。 これが、れいむのかつて夢見たすべてであった。 そして、今、この場所には、れいむが望んだもの全てがあった。 全てのゆっくりが追い求め、そして見つけることの出来なかった場所、ゆっくりプレイス。 だが、れいむにとってのそれは、人間さんがコンポスト、と呼ぶこの場所に、確かに存在していたのだった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆっくりー!」 「すーり、すーり、しあわせー。」 「すーり、すーり、・・・ゆっ、ゆっ、ゆっ」 「ゆふぅん、だめだよまりさぁ。ゆふぅ、ゆふぅーん!」 れいむ親子が初めて我が家のコンポストとなって2年。 結局外部から新たなゆっくりを連れてくる必要はなくなった。 こいつらは、家族以外のゆっくりがいないとなると、姉妹同士でつがいを作り続け、今はすでに4世代目である。 今はこれまた姉妹である、れいむとまりさのつがいがコンポストとして活躍している。 それと、最近は花壇の世話もめんどくさくなったので、街でゲッソリしていたゆうか種も一匹拾って庭に住まわせている。 最初はコンポストの連中が花を勝手に食う、食わないでもめた時期もあったが、 群れでもない以上大した量を食われることもなく、しかも花の肥料がコンポスト産だということもあり、 それなりの折り合いをつけることで落ち着いている。 「「すっきりー!」」 などと思っているところで、また増えるつもりのようだ。 れいむの頭ににょきにょきと生えたツタには赤れいむが3に赤まりさが2。 まあ、構わない。どうせ代替わりが激しいゆっくりである。 うっかり病死などしないうちに子供を作ってもらわなければ余計な手間だ。 それに増えすぎるようなら何個か潰して肥料にするだけ。 庭もすっかり華やかになって、もう幽霊屋敷の頃の面影は残っていない。 「おはよーございます。」 「ああ、農場の。おはよう。」 最近ついにこの辺も、のうかりん農場化が進み始めた。 生垣の向こうから挨拶してきたのうかりんも、そこの従業員である。 「とってもゆっくりした庭ですね。きれい。」 「まあ、ゆうかが一匹でやってるんだがね。」 「うふふ。それは失礼しました。でも、それ以上に・・・あなたの飼われているゆっくり達。」 「?」 「とってもゆっくりしてますね。今までたくさん飼いゆっくりを見ましたけど、一番ゆっくりしてますよ。」 「ふーん。そんなもんかね。」 同じゆっくりである、あののうかりんが言っているなら正しいのだろう。 よくわからんが、この2年間で一つだけ確信したことがある。 こいつらには、コンポストという仕事が向いている、ということだ。 リクのあったゴミ処理場ネタは今度また書きます。 それにしても自分のSS製作ペースがそれほど落ちたわけではないのに、 いつの間にか餡小話のそうとう下に追いやられてたり。 SS増加ペース早っ。 とりあえず、シリーズものについてはそろそろなんか書きます。 町れいむ、レイパー、計画中のペットショップシリーズ リクの消化もまだおわってないなぁ。 挿絵 by街中あき 挿絵 by??? 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 プラス本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 翌年 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) 挿絵:街中あき 挿絵:おっぱい無しあき
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・5作目です。 ・わぁぁーい!お名前いただきました^ω^ノ「取り立てあき」です。 ・HENTAIナシです。 ・よろしくおねがいします! 幼稚園から息子をお迎えにいき、帰る途中に出くわした。 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!かわいそうなんだよ! れいむだけでいきぬくにはくろうするんだよ!わかったらあまあまもってきてね! たくさんでいいよ!それがおわったらどれいにしてあげるよ! れいむみたいなびゆっくりのどれいになれるなんてこうえいにおもってね!」 「そっかー。大変だねー」 とりあえず息子を少し離した位置で、しゃがんで話を聞く。 「ゆん!はなしがわかるにんげんさんだね!わかったらはやくあまあまもってきてね! あとおうちもよういしてね!あめさんでもゆっくりできるおうちにしてね!」 「ほぉ~。あとは?」 「あとふかふかべっどさんもよういしてね!おちびちゃんがぐっすりできるやつだよ! あとおうちはれいだんぼうかんびっ!にしてね!べーこんごはんさんもよういしてね!」 「それでそれで?」 「ゆ!とにかくはやくよういしてね!ぐずはきらいだよ!どれいならさっさとしてね! しんぐるまざーはほんとうにたいへんなんだよ!わかるでしょ!」 「へー。あたしもだけど」 「・・・ゆ??」 自動販売機の影から待ってましたと言わんばかりに飛び出してきたれいむ。 あほっつらの子れいむと一緒だ。 ここでは割愛するが、諸々の理由により現在私もシングルマザーだ。 「あたしもシングルマザーなの。んでれいむはおちびちゃん何匹いるの?」 「れいむのおちびちゃんは・・えーっと・・いまはこのこだけだよ!」 「そうなんだ。あたしのおちびちゃんは二人いるの。わかる?」 「そんなことはどうでもいいよ!いまはれいむが・・」 「だから、あたしの方がおちびちゃん多くて大変だよね?ってことはれいむより大変だよね?」 「ゆ?」 「ゆ?じゃなくて。ってことは、、、シングルマザーには優しくしないといけないんだよね?」 「ゆん!そうだよ!しんぐるまざーにはやさしくしないといけないんだよ!」 「じゃぁ、あたしのほうがれいむに優しくしてもらわないといけないね」 「・・・ゅぅぅ??」 何を言ってるのかわからないといった顔のれいむ。 「れいむもしんぐるまざーなら、もっと大変な方に優しくしないといけないよね?しんぐるまざーのれいむなら理解できるよね?」 途中まで威勢のよかったれいむは餡子脳をつかってゆんゆん唸って考えている。 「ゆぅ・・・れいむは・・・・ゆん!やっぱりしんぐるまざーじゃないよ!まりさー!ゆっくりでてきてね!」 「は?」 「ゆっくりでてきたのぜ!」 「はぁ?」 自動販売機の影からまたムカツクかんじのまりさが出てきた。 どうやら『しんぐるまざーのれいむなら~』というとこに反応したらしい。 「れいむはしんぐるまざーじゃないよ!みればわかるでしょ!おぉあわれあわれ!」 「そうなのぜ!れいむとまりさはけっこんっ!してるのぜ!」 「れいむはしんぐるまざーじゃないよ!だからにんげんさんのいってることなんかきかないよ!」 「さすがまりさのれいむなのぜ!てんっさいっ!なのぜ!」 あぁ。もう理解不能。餡子脳って。 ってか嘘ついてしんぐるまざーになってご飯をもらおうとしてたのか。 「そっかー。しんぐるまざーじゃないんだね。」 「ゆん!そうだよ!わかったらゆっくりしないであまあまちょうだいね!」 「そうなのぜ!たくさんでいいのぜ!ゆうこときかないとせいっさい!するのぜ!」 「えーっと、じゃぁあたしのお家まで一緒においで」 「ゆ!はなしがわかるどれいだね!」 「こんやはごちそうにしないとゆるさないのぜぇ!」 というわけでこのゲス家族を我が家に御招待した。 面倒なので子ゆはひっそり踏みつぶしておいた。もちろんゆっくり専用のごみ箱に捨ててきましたよ。 この馬鹿親はごはんがもらえるとおもって子ゆにまで神経いかないみたい。 歩いて5分でおうちに到着。 幼稚園から帰ってきたばかりの息子たちは三時のおやつはまだかとうるさい。 「ちょっとーまってねー!」 「ゆん!はやくするのぜ!」 「まったくぐずなどれいだね!」 おまえらゆっくりにいってないし。 「はーい!」と元気に返事を返すのは息子たち。 早速台所に二匹を連れて行って掴んで揺する。 「ゆぅぅぅ・・!!!!!へんなきぶんなのぜぇぇぇ!!!!がまんできないのぜぇぇ!」 「まりさぁぁぁ!れいむもだよぉぉぉ!!!でもにんげんさんがめのまえにぃ!」 「いいのぜぇ!みせつけてやるのぜぇぇ!!! 「まりさぁぁぁぁ!!!!わいるどだよぉぉぉ!!!!」 ・ ・ 「「すっきりぃぃぃぃ!!!!!」」 れいむの額から茎が伸び実ゆ5個。まぁ悪くないか。 「ゆぅぅ!あかちゃんたち!かわいいよぉぉ!」 「ゆっくりしてるのぜぇぇ!」 『ブチ』 茎を根元からもぎ取る。 「ゆ!ゆんやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!ゆっくりしたあかちゃんがぁぁぁぁ!!!!???」 「なにをするのぜぇぇぇ!!!!!ぐぞにんげんがぁぁぁ!!!!」 飛びついてきた二匹を再度捕獲して両手に掴み、コンロに火を二つ付けて二匹を足焼き。 「ゆぐぅぅぅ!!!!あんよがぁぁぁ!!!!!!」 「かもしかぁぁぁぁ!!!!!」 うーん。うるさいなぁ。教育上良くないなぁ(いまさら) くちの部分はタコ糸で縫い縫いっと。 「んー!!!んーー!!!!」 おおおー。呪いの人形みたい。 実ゆのほうは茎をはちみつ水につけてあるのであっというまにポトリと茎から落ちる。 「「「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!!!」」 そのまま着地することなく、ボトンとそ油の中へ。 「ゅんぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!あじゅぃぃぃぃー!!!!」 「ぶきゅぶきゅしゅるょぉぉぉ!!!!みゃみゃーーー!!!!」 赤ゆがじゅわじゅわ揚ってゆく。 「ん!んんー!!!!んんんー!!!!!!」 「んんんん!!!!!!んんー!!!! 「もっじょゆっきゅりしちゃ・・・・」 私の機嫌も良くなってきた。 「何もできない親ってかわいそうね♪」 さてさて、お皿にもりつけて、揚げ赤ゆの完成! 「あっついからねー!ふーふーして食べんのよー!」 「「はーい!!!いただきまーす!!!」」 無事、赤ゆは息子たちのおやつになった。 実際シングルマザーってのは大変。働きながらの育児は本当に疲れる。 この子たちも大学とかいかせてあげたいし、今私が働けるうちに頑張って貯蓄しとかないと。 でも、最近はゆっくりがおやつ代わりになってとても節約できる。 こいつら二匹もおやつ製造機として我が家で余生をすごしてもらおう。 しんぐるまざーって大変だね! 過去に書いたもの ふたば系ゆっくりいじめ 1274 しゃっきんさん ふたば系ゆっくりいじめ 1305 しゃっきんさん その後。 ふたば系ゆっくりいじめ 1315 むしゃくしゃさん ふたば系ゆっくりいじめ 1321 おりぼんさん このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! ◆SS感想掲示板 10作品未満作者用感想スレへ ※書き込む時はSSのタイトルを書いて下さい。 コレをコピーしてから飛びましょう→『ふたば系ゆっくりいじめ 1346 しんぐるまざーって大変だね!』 トップページに戻る
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ちせ☆ 紹介 こんにちわ!(`・ω・´)ノ 騎士団見習いのチセです! まだまだ弱っちいです! 日々鍛錬を重ねてます! 以後お見知りおきを~ 【活動場所】 アルテイル2 【使用デッキ】 青 カワイイカードが多いよー^^b 【項目3】 詳細3 【項目4】 詳細4 【好きなカード】 イベール伯爵・返却竜ルーテウム♪ 【嫌いなカード】 桜!ウチのルーテウムがお前なんぞに一撃で倒される訳がねぇ! 近況報告 絵無しカードとか・・・。 運営働け^^# コメント どうも -- GEEEEN (2009-03-23 19 24 45) こんにちわ~^^ -- メルヴィア (2009-03-23 19 25 53) もっといろいろ書いたほうがいいよ俺のように -- ajen (2009-03-23 19 40 12) てすとてすと -- ちせ (2009-03-23 20 00 57) よし・・・ajenさんのを参考に・・・。って その他が充実しすぎで吹いたw -- ちせ (2009-03-23 20 05 00) ふ・・・ -- どくだみ (2009-03-24 17 17 06) 改良・・・なのか・・・? だが、同士だ! -- プロット (2009-03-24 21 08 18) 俺もそれ引く予定だよ。 魔法騎士が1枚だから@2枚チャージしたくてね -- 杏 (2009-03-27 17 18 54) ハッハー 夢の無いやつめ! ウチはイベールさん1枚ミレリアさん2枚ノゼ1枚 フェティス2枚引く予定ですお^q^ -- ちせ様 (2009-03-28 06 03 12) 名前 コメント
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『孤独なれいむと森に住むぱちゅりー』 29KB 制裁 愛情 自業自得 差別・格差 飾り 同族殺し 群れ 青いリボンのれいむの話。 人里近くの山のふもとに、ゆっくりの小さな群れがあった。 危険な野生動物や捕食種もおらず、ゆっくりたちにとってそれなりに暮らしやすいところである。 そんな群れのテリトリー内にある巣穴の一つから、暢気な歌声が響いてくる。 「ゆっゆ~ん♪おちびちゃんかわいいよ~♪」 「まりさのおちびちゃ~ん♪はやくうまれてくるのぜ~♪」 巣穴の中には植物型妊娠をしてれいむと、伴侶と思われるまりさの二匹のみ。 この二匹は数日前に結ばれたばかりの若い夫婦だ。 しかしれいむの頭にある茎には六つの実ゆっくりがなっており、それら全てがすでに生れ落ちるのに申し分ないほどの大きさに育っている。 不意に、茎の先端に実った実ゆっくりがぷるぷると震え始める。 「ゆ~ゆ~…ゆ!?おちびちゃんがうまれおちそうだよ!まりさ、じゅんびしてね!」 「わかったのぜ!」 まりさは帽子を取ると、それを茎の下に敷く。 二匹が固唾を呑んで見守っていると、先端の実ゆっくりが茎から離れ落ちた。 ――ポト 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「ゆっくりしていってね!ゆううううううおちびちゃんかわいいよおおおおおおおお!」 「ゆっくりしていってね!まりさのはじめてのおちびちゃんなのぜええええええええ!」 拙い挨拶をする赤ゆっくり(種類はれいむ)を見て感激する二匹。 間をおかずして、次々と実ゆっくりが体を震わせる。 ――ポト 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 ――ポト 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 そんな調子で五匹の赤ゆっくりが茎から離れ、残りは一匹だけとなった。 「ゆ!?このこでさいごだよ!」 「さいごのおちびちゃん!ゆっくりうまれるのぜ!」 最後の実ゆっくりが震え、帽子の上に落下する。 種類はれいむのようだ。 赤れいむは姉妹たちと同じように、両親に顔を向けてお決まりの挨拶をする。 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりして…ゆ?」」 両親はその赤れいむを見た途端、呆然とした顔になる。 「ゆ?……ゆっくちしちぇいっちぇね!」 赤れいむ(以下末れいむと呼ぶ)は挨拶が聞こえなかったのかと思い、先ほどよりもはっきりとした挨拶を返す。 だが、両親の表情はゆるむどころか、ますます険しくなるばかりだ。 「…なんなのこのきもちわるいこは?」 「…ゆっくりしてないんだぜ」 「ゆ?ゆ??」 突然ゆっくり出来ないことを言い出した両親に困惑する末れいむ。 まさか自分に向けられた発言とは思わず、末れいむはゆっくり出来ない存在を探すために周りをきょろきょろ見回す。 両親はそんな末れいむを無視して、先に生まれた姉妹たちの方に向き直る。 「さ、おちびちゃんたち!あんなゆっくりできないくずはむししてごはんさんにしようね!」 「「「「「ゆわーい!ぎょはんぎょはん!」」」」」 親れいむは茎を振り落とすと、それを租借して柔らかくし、姉妹五匹の前に平等に分け与える。 「「「「「むーちゃむーちゃ!ちあわちぇー!」」」」」 姉妹たちは初めての食事を幸せそう顔で貪り、食べかすをあちこちに撒き散らす。 両親はその様子を満足げな表情で眺めていた。 「ゆ!れいみゅも!れいみゅもおにゃかしゅいた!」 末れいむも家族の団欒に加わろうと、姉妹たちの元へ這って行く。 ――ドン 「ゆびぃ!?」 しかし辿り着く前に、親まりさに体当たりされて吹き飛ばされてしまう。 地面を勢いよく転がったものの、何とか致命傷を負わずに済んだ。 しかし生まれたばかりに経験するにはあまりに強烈な痛みに、末れいむは体を動かすどころか声を発することすら出来ないでいた。 「きもちわるいがきはちかよるんじゃないのぜ!」 「まったく!こんなのがれいむのこどもなんてはずかしいよ!」 「ゆぷぷ!こんなゆっくちできにゃいやちゅしゃっしゃところしぇばいいのじぇ!」 「しょーだよ!くじゅはゆっきゅりできにゃいきゃらこりょしゅべきぢゃよ!」 「おちびちゃんそんなこといっちゃいけないよ!たしかにこいつはくずだけどゆっくりごろしはゆっくりできないよ!」 「そうなのぜ!かわいいおちびちゃんたちはころすなんてことばはつかっちゃいけないのぜ!」 「「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」」 (ゆ…どおちて…) なぜ自分がこんな目に遭うのか理解できず、涙を流す末れいむ。 しばらくすると満腹になった姉妹たちは眠り、両親もそんな姉妹たちに寄り添って眠った。 その間、家族に一瞥もされることはなかった末れいむは、姉妹たちがこぼした茎のカスを舐めとって飢えを凌ぐしかなかった。 別に末れいむは奇形児でもないし未熟児でもない。 知能や外見に問題はないし、体型も赤ゆ特有の丸い体で健常そのものである。 お飾りが青色であることを除けばだが。 末れいむのお飾りは、れいむ種特有の紅白リボンではなく青と白の二色で彩られたリボンだった。 極々稀にではあるが、ゆっくりの世界ではお飾りが変だったり、元々お飾りがないゆっくりが生まれることがある。 そういうゆっくりは、大抵は生まれてすぐ親や他のゆっくりに殺されてしまい、ゆっくりの社会に出てくることはそうそうない。 だが幸運と言うべきか不運と言うべきか、末れいむのお飾りがおかしなところは『色』だけで他は全く異常がなかった。 そのため辛うじて他のゆっくりから同族と認識されるも、ゆっくり出来ないゆっくりであると判断されてしまったのだ。 それから、末れいむはゆっくり出来ない毎日を送ることとなった。 「やめちぇね!おねえちゃんやめちぇね!」 「ゆ?くじゅのくしぇににゃにかいっちぇりゅよ!」 「おみゃえにゃんきゃまりしゃのいもうちょじゃにゃいのじぇ!」 「ばきゃにゃの?ちにゅの?げりゃげりゃ!」 「くずなゆっくりをいじめるのはたのちいのじぇ!」 姉妹全員にゆっくりできないと罵倒され、体当たりされてボコボコにされる。髪の毛を引っ張られて引きずり回されたり、枝で軽くぷすぷす刺されたりする。 それが生まれてから一日とて欠かさず行われる、末れいむの日課だった。 「ゆ…ゆ…」 「ゆ?みょうはんにょうしにゃくなっちゃのじぇ?」 「まっちゃく、もりょくちぇちゅかえにゃいどうぎゅだにぇ!」 「おちびちゃん!あんまりやりすぎちゃいけないよ、ころしたらゆっくりできないにおいがうつっちゃうからね!」 「「「「「ゆっきゅりりかいちたよ!」」」」」 あまり暴行が激しいようだと両親が止めることがあったが、暴行をやめるように言うことは一度もない。 末れいむと家族同士の触れ合いは一切なく、末れいむの食事は死なない程度の最低限の量しか与えられなかった。 赤ゆっくりたちが子ゆっくりに成長し、巣穴の外に出るようになっても末れいむに対する扱いは変わらなかった。 むしろ群れのゆっくりたちが加わった分、酷くなったと言っていい。 「だれきゃ…たしゅけちぇ…」 「ゆ!こんなところにゆっくりできないくずがいるよ!」 「あのいっかもこんなくずがみうちにいるなんて…かわいそうなのぜ」 「おまえなんかいきてるだけでめいわくなんだよ!さっさとしんでね!」 「しねくず!」 「ゆ……」 群れのゆっくりたちの末れいむに対する反応は、嘲笑するか見下すか罵倒するかのどれかだった。 青い飾りの末れいむはゆっくりの中では異端の存在であり、ゆっくりは異端を『ゆっくり出来ないゆっくり』として排除する傾向が強い。 末れいむが殺されない理由はただ一つ、『ゆっくり殺しはゆっくり出来ない』という本能に刻み込まれた戒律のためだ。 末れいむの味方はどこにもおらず、周りのゆっくりからは常に嫌がらせや暴行を受けていた。 しかしこんな目にあっても、群れの外に逃げ出すという考えは末れいむにはなかった。 誰も助けてくれない状況で一人で生きていけるとは思えなかったし… こんな扱いを受けていても、家族と一緒にいたいという気持ちがあったからだ。 末れいむが産まれて一ヶ月が経った。 まだ子ゆっくりの段階であるにも関わらず、毎日たっぷりと食べてきた姉妹たちと、生きていける最低限の食事しか与えられなかった末れいむとでは、体格にかなりの差が出ていた。 ――ポスン、ポスン 「おねーしゃんぱしゅなのじぇ!」 「ゆゆ!ゆっくりりかいしたよ!」 「ゅ……」 その日もいつものように、末れいむは姉妹たちに追い掛け回されてボール代わりにされていた。 最近は末れいむも泣き喚くようなことはせず、体当たりされようと何されようと黙って為すがままにされるようになっていた。 今までの経験から、姉妹たちが飽きるのを待ってじっと耐え忍ぶのが最もダメージが少ないと学習したからだ。 「ゆゆ!みんなまっちぇね!」 「「「「ゆ?」」」」 不意に姉妹の一匹が、何かに気づいたように姉妹たちに声を掛ける。 気がつくと子ゆっくりたちの目の前には、日の光もろくに差さないような深い森が見えていた。 「このもりはたしかゆっくりできないもりだよ!おかーさんやおとーさんがちかづいちゃいけないっていってたばしょだよ!」 「ゆゆ!おみょいだしたのじぇ!このもりには『ゆっくりできないゆっくり』がいるってきいたのじぇ!」 「ゆ!れいみゅもおもいだしたよ!」 「はやきゅここからはなれりゅのじぇ!」 この森は群れのゆっくりたちの間で、ゆっくり出来ないゆっくりが住んでいる、ゆっくり出来ない場所と伝えられている。 そのため群れの子ゆっくりは、親からこの場所に近づいてはいけないと何度も注意されていた。 「ゆ、ゆっくりここからはなれりゅよ!」 「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」 長女れいむの号令で、姉妹たちは一斉に森から離れていく。 「ゆ…まっちぇ…れいみゅをおいてかにゃいで……」 意識が朦朧とする中、末れいむは姉妹たちに助けを求めるも、姉妹たちはすでにその場からいなくなっていた。 「ゆぐ…ゆぐ……おとーしゃん…おかーしゃん…おねえちゃん……」 決して報われることのない家族への思いを胸に、末れいむはその場で静かに泣きじゃくっていた。 しかし、そんな末れいむに近づく一匹のゆっくりがいた。 「むきゅ、そこのれいむ。どうして泣いてるのかしら?」 「…ゆ?」 末れいむが顔を上げると、そこには一匹の成体ぱちゅりーがいた。 群れのゆっくりたちとはどこか違う雰囲気を持っており、帽子に特徴的な模様が彫られた木製のバッチが付いている。 「酷い怪我ね…大丈夫?」 「……おねーちゃん……だりぇ?」 「ぱちぇはこの森で暮らしてるものよ。 とりあえず手当てが必要ね、ぱちぇのお家に連れてってあげるわ」 ぱちゅりーは末れいむを頭に抱えると、森の奥へと移動した。 しばらくすると、朽ち果てた巨木が見え、巨木の根元にはゆっくりが一匹分通れる穴が開いている。 ぱちゅりーは末れいむと一緒に、その中へと入っていった。 「むきゅ、ちょっと待ってなさい」 ぱちゅりーは末れいむを柔らかい干草の上に寝かせると、目の前に花や甘い草をすり潰したものを置いた。 「お腹がすいてるでしょう、まずはこれを食べなさい」 そういうとぱちゅりーは巣の奥に移動し、なにやらごそごそと探している。 末れいむはぱちゅりーと目の前の食事を交互に見た後、恐る恐るといった様子で口にした。 「むーちゃ…むーちゃ…ち、ちちちちあわちぇえええええええええ!」 普段食べているものとは比べ物にならないほどおいしい食べ物に、末れいむは感動の涙を流す。 苦くて硬い草しか食べてこなかった末れいむにとって、それは革命的と言っていいほどの食事だった。 末れいむが食事を終えたのを見計らって、ぱちゅりーは綺麗な葉っぱで末れいむの体を拭き、何か液体を末れいむの傷口に塗っていく。 傷口にそれを塗られるたびに、末れいむの体からは傷が消え痛みが引いていった。 「これで良し、と。しばらく安静にしてればすぐに良くなるわ」 「ゆ!ぱちゅりーおねえちゃんありがちょう! ……ぱちゅりーおねえちゃんはれいみゅをいじめにゃいの?」 「むきゅ?おかしなこというわね。こんな可愛らしい子を虐めるわけないじゃない」 「けど…れいみゅのおかざりしゃん、へんでしょ?」 「ぱちぇは別に変だと思わないわ。鮮やかな青色をした、綺麗なお飾りじゃない」 「ほんちょ!?えへへ…」 今まで虐げられる原因だったお飾りを初めて褒められた嬉しさから、末れいむは恐らく生まれて初めての満面の笑みを浮かべる。 「ところでれいむ、あなたはどうしてあんな場所で倒れていたのかしら?」 「ゆ……しょれは…」 末れいむは自分が生まれてからどんな目に遭って来たか、家族や群れのゆっくりたちからどういう目で見られてきたか、 森の近くで倒れていたのは姉妹たちに追いかけまわされたから、ということなどを全て話した。 ぱちゅりーは末れいむの話が終わるまで一言も口を挟まず、黙って耳を傾けていた。 「むきゅ…苦労したのね」 「ぱちゅりーおねえちゃんは、どうちてこんにゃところにひとりでくらしちぇるの?」 「ぱちぇも昔は群れのゆっくりの一員だったのよ。けど群れの皆とはそりが合わなくて、群れから離れてここで暮らすことになったの」 「ふーん…ぱちゅりーおねえちゃん、これにゃーに?」 末れいむは先ほど自分の体に塗られた液体を、ぱちゅりーに尋ねる。 「これはさっきれいむが食べたこの草をすり潰して水で溶いたものよ。わずかな甘みがゆっくりの治癒能力を促進させるの。 軽い怪我ならこれを塗るだけですぐに治せるわ」 「ゆ!しょんなことをしってるにゃんて、ぱちゅりーおねえちゃんはしゅごいにぇ!」 「むきゅ、それほどでもないわ」 「ゆ、おしょとがくらくなってきちゃよ!しょろしょろむれにかえらにゃいと」 「……大丈夫なの?」 「ぱちゅりー…れいみゅはおうちにかえりちゃいよ」 「そう…分かったわ。 森の中を跳ねてたら迷ってしまうでしょうから、ぱちぇが群れの近くまで案内してあげるわ」 巣穴の外へ出たぱちゅりーは末れいむを連れて、森の中を移動する。 しばらくすると、末れいむとぱちゅりーは遠くに群れの広場が見える場所まで辿り着いた。 「ゆ!ここからはひちょりでだいじょうぶだよ!」 「そう、じゃあ案内はここまででいいかしら」 末れいむは群れの方へと跳ねていく。 ぱちゅりーは末れいむを見送るように、じっと後姿を見ている。 「…ぱちゅりーおねえちゃん」 少し進んだところで不意に末れいむは足を止め、ぱちゅりーの方へ向き直る。 「あら、なにかしら?」 「…また、ぱちゅりーおねえちゃんのところにいっちぇもいい?」 「もちろんよ、機会があったらここに来なさい。ぱちぇはいつでもれいむのことを待っているわ」 「…ゆ!ありがちょうぱちゅりーおねえちゃん!」 末れいむは群れの方へと意気揚々と跳ねていく。 ぱちゅりーは末れいむの姿が見えなくなったのを確認すると、森の奥へと消えていった。 「ゆ!?くずがかえってきたのぜ!」 「あのゆっくりできないもりにいったんだってね!おおおろかおろか!」 「くじゅはやっぴゃりくじゅなのじぇ!げりゃげりゃ!」 「くじゅははやきゅしんだほうがいいのじぇ!」 家に帰ってきた末れいむを待っていたのは、普段と変わらない日常だった。 いつものように姉妹たちから暴行を受け、両親からは嘲笑される。 だが、末れいむの心にいつも感じていたような絶望はない。 今日初めて、自分と接してくれるゆっくりと出会えた。そのことは末れいむにとって大きな活力になった。 またぱちゅりーに会いたい、会えるかもしれない…そんな思いを胸に、末れいむは眠りについた。 それから末れいむは、群れのゆっくりたちの隙を見ては、群れの外に出るようになった。 姉妹が目を離した隙や、一家が狩りに出ている最中、家族全員が昼寝をしているときなど… 隙を見つけては森に入り、ぱちゅりーのところに足繁く通った。 「ぱちゅりーおねえちゃん!ゆっくちちていってね!」 「むきゅ、いらっしゃいれいむ。ゆっくりしていってね」 ぱちゅりーはれいむに様々なことを教えた。 本来親が教えるべき狩りの知識や食べられるものの区別、巣穴の作り方、ちょっとした生活の知恵、捕食種や野生動物への対処方法などなど。 そして、人間のことについても教えた 「むきゅ、今日は人間さんについてのお話をしましょう」 「ゆ?にんげんさんってなに?」 「人間さんというのは、ぱちぇたちゆっくりよりも体が大きくて、ゆっくりよりも遥かに力が強くて賢い生き物よ。 群れの北の方にも、大勢の人間さんが住んでる場所があるわ」 「ゆー!そんないきものいるの!?れいむにんげんさんにあってみたいよ!」 「ダメよ、人間さんには不必要に近づくべきではないわ」 「ゆ、どうして?」 「人間さんは、自分のテリトリーを荒らすものは決して許さないわ。 人間さんの一番怖いところは、力が強いところでも頭がいいことでもない、敵と認めたものに対しては一切容赦しないところよ。 例えれいむに悪意がなくても、人間さんに見つかっただけで殺されるということだってありえるのよ」 「ゆ…にんげんさんってこわいね」 「人間さんにはいろんな人がいるのよ。 私たちゆっくりに友好的な態度を示してくれる人もいれば、敵意を持って接してくる人もいるわ。 …少なくとも今は、出来るだけ関わらないほうがいいと思うわ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 末れいむはぱちゅりーから授かった狩りの知識を生かして栄養があるものを採取し、どんどん体が大きくなっていった。 その分姉妹たちの暴力も過激になっていったが、体が丈夫になるにつれて深い傷を負うことがほとんどなくなった。 いつしか末れいむの体は、姉妹たちと寸分違わぬくらいの大きさまで成長していた。 末れいむが成体ゆっくりより一回り小さいくらいまで成長した頃… 季節は秋になり、紅葉が散り始める時期になっていた。 群れでは大量の食料を巣穴に溜め込み、冬篭りの準備を始めなければならない時期でもある。 しかし… 「ゆゆ!おかしいよ!むしさんやはなさんがぜんぜんとれないよ!?」 「どうしておはなさんもむしさんもいないのおおおおおお!?」 「しょくりょうがぜんぜんたりないんだぜ!これじゃふゆをこせないんだぜ!」 群れの近くにある狩場では、獲物が全く採れなくなったのだ。 理由は単純なもので、単に群れのゆっくりが増えすぎたために自然の恵みの生産量が消費量に追いつかなくなっただけのことだが、群れのゆっくりたちにそんなことは分からない。 群れの中に打開策を考えるものはほとんどいなかった。 ゆっくりたちはただただ目の前の問題を嘆くのみで、現状に対する不満をぶつける相手を必死で探していた。 「ゆゆ!わかったよ!」 『ゆゆ!?』 「きっともりにいる『ゆっくりできないゆっくり』がたべものをひとりじめしてるんだよ!」 そして、群れのゆっくりたちは不満をぶつける相手として、森に住むぱちゅりーを選んだ。 「ゆー!なんてことなんだぜ!」 「まえからゆっくりできないとおもってたけど、そんなことまでするなんてさいていのげすなのぜ!」 「せいっさいがひつようだよ!」 「せいっさい!せいっさい!」 群れのゆっくりたちはぱちゅりーを制裁しようという気運が高まっていく。 それの様子を少し離れた場所で見ていた末れいむは、脇目も振らずにぱちゅりーのところへと向かった。 (このままじゃぱちゅりーがころされちゃうよ!はやくしらせないと…) ぱちゅりーの巣穴に辿り着いた末れいむは、すぐさま中へと入る。 「たいへんだよぱちゅりー!むれのゆっくりたちが…ゆ!?」 巣穴の奥で末れいむが見たものは、地面に倒れて蹲まっている弱弱しい様子のぱちゅりーの姿だった。 「ぱちゅりー!?どうしたの!?」 「むきゅ…れいむかしら…ゆっくりしていってね…どうしたの、そんなに慌てて…?」 「ゆ!じつは…」 末れいむは群れの近辺で食料が採れなくなったこと、群れのゆっくりたちはその原因をぱちゅりーのせいにしていること、 ゆっくりたちはぱちゅりーを制裁しようとしていることを説明した。 「このままここにいたらころされちゃうよ!だからはやくにげないと…」 「……ごめんなさいれいむ…ぱちゅりーは逃げられないわ…」 「ゆううう!?」 「ぱちぇは今まで随分長く生きてきたわ…それこそ群れの大人たちの誰よりも長く…だからもう体がまともに動かないの…」 「そ、そんな…」 ぱちゅりーはゆっくりとしてはかなりの高齢であり、そろそろ寿命が近いことを末れいむに説明した。 「だかられいむ…ぱちぇに構わずここから逃げなさい……ここにいたられいむまで殺されてしまうかもしれないわ…」 「い、いやだよ!ぱちゅりーとはなれたくないよ!」 ぱちゅりーはしばらく無言になると、帽子についていた木のバッチを外し、末れいむに渡した。 「人間さんが住んでる場所は、以前教えたわよね……これを持ってそこに行きなさい…」 「ゆ、それはぱちゅりーの…」 「このバッチは…お兄さんがぱちぇを識別するために特別に作ってくれたものなの……これを見せて事情を説明すれば…きっとれいむを保護してくれると思うわ」 「おにいさん…?」 「…ぱちぇはね…元々は人に飼われるゆっくりだったのよ」 かつてぱちゅりーは都会のゆっくり専門ペットショップで生まれたゆっくりだった。 成体で、しかも体が弱い不良品として処分される寸前だったぱちゅりーは、田舎から上京していたある男性に買われることとなった。 山に囲まれた僻地にある小さな村で暮らすことになったぱちゅりーは、飼い主や村人たちにとても大切に育てられた。 ぱちゅりーはそんな人間たちから様々な知識を学び、飼い主や村人たちに日々感謝した。 そして、多くのゆっくりと人間がいがみ合う関係にあることを知ったぱちゅりーは、いつしか『人間とゆっくりが互いを想い合う関係』を作るという夢を持つようになった。 ぱちゅりーは夢を実現するために、まずは野生のゆっくりに接触する必要があると考え、飼い主に頼んで近くの山に住むゆっくりたちの群れに、自分を捨ててくれるよう頼んだ。 飼い主と周りの村人たちは当然猛反対したが、結局ぱちゅりーの説得と強固な決意に折れた。 そこで飼い主が、いつでも帰ってきていいようにと、目印として帽子に模様を彫った木のバッチをつけさせたのだ。 「けど、ぱちぇの話を聞いてくれるゆっくりは誰もいなかったわ……皆人間さんのことを見下すだけで、人間さんのことを一つも知ろうとしない…… そのうち群れの皆はぱちぇのことを鬱陶しく思うようになって、ぱちぇを群れの外へと追い出したの」 「……」 「それからぱちぇは…群れの近くのこの森で、ぱちぇの話を聞いてくれるゆっくりが現れるのを待っていたわ…… ふふ、待ってた甲斐があったわ……れいむ、あなたに会えたのだから」 「ぱちゅりーおねえちゃん…」 「さ、もう行きなさい……群れのゆっくりたちと鉢合わせしたら大変だわ…」 「…さいごに、ひとつだけいい?」 「なにかしら…?」 「…おかあさんって…よんでいい?」 しばらく無言になる二匹。 おもむろに、ぱちゅりーはれいむに顔を寄せ、すーりすーりをした。 「…例え餡子は繋がってなくても……あなたはぱちぇの自慢の娘よ」 「ゆぐ……ぱちゅりー…おがあざん!」 そのまましばらく頬をすり合わせ、二匹はそっと離れる。 時間にして一分にも満たない頬ずりだったが、二匹にはそれで十分だった。 「さ…もう行きなさい」 「……!」 末れいむは名残惜しさを振り切るように、巣穴から飛び出していった。 巣穴から少し離れたところで、不意に背後から大勢のゆっくりの声が聞こえてくる。 ――ゆ!みつけたよ!ここがげすのすみかだよ! ――げすはせいっさいしてやるんだぜ! 末れいむはゆっくりたちの怒号を背に受けながら、森の奥へと消えていった。 翌日―― ぱちゅりーへの『せいっさい』を終えてひとまず満足した群れのゆっくりたちだが… 当然、群れの食料事情は一向に改善しなかった。 「ゆゆ!おかしいよ!むしさんやはなさんがぜんぜんとれないよ!?」 「しょくりょうがぜんぜんたりないんだぜ!これじゃふゆをこせないんだぜ!」 「ゆっくりできないゆっくりはせいっさいしたのにどうしてごはんさんがないのおおおおおおおお!?」 結局わめき散らすことしかしない群れのゆっくりたち。 しかし一匹のれいむがまた、事態を動かす発言をする。 「ゆゆ!こんどこそわかったよ!」 「ゆゆ!?」 「げすぱちゅりーがにんげんさんとなかよくしようとか、わけのわからないことをいってたよ! きっとぱちゅりーはげすなにんげんとてをくんで、ゆっくりしてるれいむたちにいじわるしたんだよ!」 「ゆううう!?それはきづかなかったのぜええええ!」 「それならげすにんげんもせいっさいしないといけないね!」 『せいっさいせいっさい!』 そして群れのゆっくりたちは、今度は人間を『せいっさい』の対象として選んだ。 ぱちゅりーの話を全く聞いていない群れのゆっくりたちの人間に対する認識は、『ばかでおろかでゆっくりできないいきもの』ということのみであり、 人間はどのような存在か、どれだけの力量を持っているかということを知っているゆっくりは、末れいむを除いて皆無だった。 愚かなことに、ぱちゅりーの『せいっさい』に成功したゆっくりたちは、人間に対する『せいっさい』も、同じように成功すると信じて疑わなかった。 「けど、くそにんげんはどこにいるのかわからないよ…」 「そういえばげすぱちゅりーがいってたのぜ!おやさいさんはにんげんがそだててるって! いぜんまりさはおやさいさんをとってきたことがあるけど、きっとそこににんげんがいるのぜ!」 「すごいわまりさ!なんてあたまがいいの!?」 「ゆへへ、それほどでもないんだぜ!」 「じゃあまりさ!れいむたちをそこまであんないしてね!」 「まかせるんだぜ!みんなでくずにんげんをせいっさいしにいくのぜえええ!」 『ゆっゆおー!!!』 以前人里の畑に侵入し、野菜を盗むで生還したゆっくりが群れを先導する。 赤ゆや子ゆも含めた群れの全てのゆっくりが、人里に向けて出発した。 ゆっくりたちは群れを出て北の方に向かってただひたすら跳ねていくと、急に視界が開けた場所に出た。 そこには茅葺屋根で出来た家があちこちに点在し、家の近くには田んぼや畑がいくつもあった。 ゆっくりたちがまず目にしたのは、色とりどりの野菜がたわわに実った、大きな畑だった。 「ゆゆ!おやさいさんがいっぱいあるよ!」 「あれだけのおやさいさんをひとりじめするなんて…ゆるせないんだぜえ!」 「あのおやさいさんはぜんぶれいむのものにするよおおおお!」 「ぜんぶまりささまがむーしゃむーしゃするんだぜええええ!」 畑を前にした途端、当初の目的を忘れて畑に殺到するゆっくり。 『おやさいさんをゆくりたべるよ!』 畑に侵入し、野菜を食べようとした瞬間… 「今だ!」 不意にどこからか掛け声がし、それと同時にゆっくりたちの上に網がかかって身動きが取れなくなった。 「ゆゆ!なんなのこれ!」 「うごけないんだぜ!?」 網に絡まって右往左往するゆっくりたち。 ゆっくりたちの周りを、いつの間にか大勢の人間が取り囲んでいた。 「ゆ!くそにんげんがいるよ!」 「おいくそにんげん!まりさたちをここからだすのぜ!」 「なにぼけっとしてるの!?はやくしろおおおおおお!」 「げすなにんげんはしねええええええええ!」 「おやさいさんをむーしゃむーしゃさせろおおおおおお!」 人間たちの集団から、一人の男と一匹のゆっくりが前に出る。 男の方は見た目はごく普通の青年で、ゆっくりの方はあの一家に虐げられていた末れいむだった。 末れいむのリボンには、ぱちゅりーから託された木製のバッチが付いている。 「ゆゆ!くずがいるのぜ!」 「どおしてくずがそこにいるのおおお!?」 「おいくず!まりさたちをたすけるんだぜ!」 「はやくしろくず!」 たまたま男と末れいむに一番近い位置にいた末れいむの家族が、末れいむに対して助けを求める。 しかし末れいむは群れのゆっくりたちを悲しそうな目で見るだけで、一向に行動を起こそうとしない。 「…れいむ、こいつらとは知り合いなのか?」 「このゆっくりたちは、れいむのおやとしまいだよ」 「そうか…」 「ゆっがああああああああああああ!なにしてるんだぜえええええええ!?はやくまりさたたちをたすけろおおおおおおおお!」 「まぁ待てお前ら、まずは俺の質問に答えてくれないか」 れいむの横にいた男が、ゆっくりたちに声を掛ける。 「ゆゆ!なんでくそにんげんのしつもんにこたえなきゃいけないの?ばかなの?しぬの?」 「質問に答えてくれたら、あまあまをやるよ」 「ゆ!あまあま!?」 「はやくよこすのぜ!」 「よこせ!よこせえ!」 「あまあま!あまあまあああ!」 あまあまという言葉を聞いて騒ぎ出す群れのゆっくりたち。 あまあまを貰ったところで拘束を解いてもらわなければ、結局何の意味がないのだが…群れのゆっくりたちはとりあえず目先の利益に飛びつくことしか頭に無かった。 男はゆっくりたちに問いかける。 「お前たちは何でここに来たんだ?ここはお前たちが住んでるところからも大分離れているはずだ」 「そんなのきまってるよ!くそにんげんをせいさいするためだよ!」 「やまからたべものがとれなくなったのはおまえらくそにんげんのせいなのぜ!」 「れいむたちがかわいいからってしっとするのはみぐるしいよ!ゆっくりしゃざいしてね!」 「山の恵みが足りなくなったのは、単にお前たちゆっくりの数が増えて自然の恵みが減っただけだろう。ぱちゅりーから教わらなかったのか?」 「ゆ?ぱちゅりーって…もしかしてあのゆっくりできないぱちゅりー?」 「あのゆっくりできないぱちゅりーならまりさたちがせいっさいしてやったのぜ!」 その発言を聞いた途端、男や末れいむを含めた全ての村人の纏う空気が変わった。 「…なんで殺したんだ?」 「あのぱちゅりーがゆっくりできなかったからだよ!」 「いつもいつもれいむたちのじゃまばかりして!」 「こどもをつくるのはゆっくりできなくなるとか、わけがわからないことをいってたし!」 「とかいはなこーでぃねーとにかってにくちだししたこともあったわ!」 「あんなくずしんでとうぜんだね!」 「だからこのまえげすぱちゅりーをせいさいしてやったのぜ!」 「あのぱちゅりーをみつけたときは、れいむたちにおそれをなしてそのばでぶるぶるふるえてたよ!ゆぷぷ!」 「まずはおうちからひきずりだして、おかざりをひきさいてやったのぜ!」 「もみあげもひきちぎってやったよ!そのあとぼーるにしてあそんであげたよ!」 「ぼーるあそびのさいちゅうにはんのうをかえさなくなったから、そのあとはおめめやまむまむをぷーすぷーすしてやったよ!」 「さいごはぜんいんでぼこぼこにたいあたりをしてつぶしてやったのぜ!なかみがとびちるさまをみたときはすっきりーしたのぜ!」 「けどはんのうがにぶくていまいちだったのぜ!さいごまでもろくてつかえないどうぐだったのぜ!」 『げらげらげらげらげらげらげらげらげらげら!』 ぱちゅりーをどのようにしてなぶり殺しにしたか、それを嬉々として語るゆっくりたち。 男の方は表情を硬くして拳を硬く握り締め、末れいむは顔を伏せて体を震わせている。 ――グチャ 『……ゆ?』 不意にゆっくり出来ない音が聞こえて、群れのゆっくりたちは音がした方向を見てみる。 そこには怒りの表情でクワを振り下ろした村人と、クワに潰された一匹のれいむの姿があった。 『ゆ…ゆぎゃああああああああああああああああ!?」 「いきなりなにするのおおおおおおおおおおおおお!?」 「よくもれいむをころしたなああああああああああああ!」 「ゆっくりし…」 「死ぬのはお前らだ糞共がぁ!」 そう叫んだ村人の声を皮切りに、激昂した村人たちは群れのゆっくりたちを足や鍬を使って潰し始める。 次々と潰されていく同族を見て、鈍感な群れのゆっくりたちはようやく命の危険を感じた。 「ご、ごめんなざいいいいいいい!」 「ごろざないでえええええええ!」 「やめるのぜ!まりさをころしたら…えぎゅ!?」 周りのゆっくりたちが殺される様子を、末れいむの一家は怯えながら見ていた。 一家は男の傍にいる末れいむに助けを求める。 「お、おいくず!はやくれいむたちをたすけろ!」 「なにぼーっとしてんだくずううううううううう!」 「はやくまりさたちをたすけるのぜえええええええ!」 「さっさとしろおおおおおおお!こののろま!くず!」 「れいむたちをたすけたらさっさとしねええええ!」 一家は末れいむに、自分たちを助けるよう必死で命令する。 末れいむはそんな一家を感情の篭らない目で見ていた。 「…れいむ、こいつらをどうするかはお前が決めていい」 「いいの?おにいさん」 「俺たちにとってこのゆっくり共はぱちゅりーの仇だが、こいつらは…ぱちゅりーの忘れ形見であるお前の家族でもあるからな。 れいむがこいつらを殺さないでと言うのなら、見逃してやってもいい」 「「「「「「「ゆ!?」」」」」」」 男の言葉を耳にした一家は、自分たちの運命が末れいむの一言によって決まることを理解した。 途端に一家は態度を一変させ、媚びへつらうような口調で末れいむに命乞いをする。 「れ、れいむのかわいいおちびちゃん!れいむたちをたすけてね!」 「まりさたちをたすけるのぜ!おちびちゃんはまりさたちのかぞくなのぜ!」 「いままでいじめてごめんね!おねえちゃんはれいむのことだいk…すきだよ!」 「くz…れいむ!おねがいだからまりさをたすけるのぜ!」 「れいむもまりさたちといっしょにいたいのぜ!?そうなのぜ!?」 「そうにきまってるのぜ!れいむはまりさたちのことがすきなのぜ!」 「だってれいむたちはあんこがつながったかぞくなんだからね!」 一家の言葉を受けて末れいむは一度顔を伏せると、再び顔を上げる。 その顔には先ほどまであった悲しみの表情は一切なくなり、怒りと憎しみと恨みに染まっていた。 「…おまえたちなんてかぞくじゃないよ」 「「「「「「「……ゆ?」」」」」」」 「れいむのかぞくは…おまえたちがころしたぱちゅりーおかあさんだけだよ。 ぱちゅりーおかあさんをころしたおまえらは…………ゆっくりしないでしねえええええ!」 「ゆっがああああああなにいってるのぜええええええええ!?」 「このおんしらずうううううううううううう!」 「このくずがああああああ!したてにでてればちょうしにのりやがってええええええええ!」 「決まりだな」 男は鍬を抱えると、一家に向けて振り下ろす構えを占める。 「ああああああああああああああああああいやだいやだああああああ!しにたくないいいいいい!」 「いやだあああああああああ!まりささまはこんなところでしんでいいゆっくりじゃないのぜええええええ!」 「だずげでえええええええええ!くずどいっでごべんなざいいいいいいいい!」 「く…れいぶざま!まりざだぢをだずげでぐだざいいいいいいいい!おねがいでずうううううううう!」 「くずれいぶうううはやぐだずげろおおおおおおおお!」 男は鍬を振り下ろす。 一家が断末魔を上げる様子を淡々とした表情で眺める末れいむ。 しかし、餡子を分けた家族と別れる悲しさによるものか、仇を取れた嬉しさによるものか、それとも両方なのか… 末れいむの目からは一筋の涙が流れ落ちた。 後書き 最後まで読んでいただきありがとうございます。 いろいろと大変(リアル事情とかSS書きとしての腕前とか集中力とかその他もろもろ)でしたが、何とか書き上げることが出来ました。 よろしければご意見ご感想をお願いします。 「10作品未満の作者4スレ目」 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1299127853/ ではでは。 過去の作品 anko0857 願いの果てに anko3412 親の心子知らず anko3430 子ありすと都会派な人形 anko3445 ある群れの越冬方法 anko3464 とある一家のお話
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♪眠れない夜 もんげを苛む煩悩 焦燥感 耐えられないなら アンダーグラウンドのサービスだもんげ どんな時も万全にもんげられる その名は もんげ! ニコと2chもてあそぶヘンタイ あなたに 委ねる 秘密の 合い言葉 情熱 快楽の 開放 待ち望む そうよ みだれちゃうんだもんげー もっと高めて果てなく 心の奥まで 貴方だけが使えるテクニックで もんげつくちて 本能 渦巻く最中にもんげるときめき 今宵だけの夢 叫ぶわ ハゲしく もんげ高めて果てなく もんげの奥まで もんげだけが使えるテクニックで もんげつくちて もんげ 渦巻く最中にもんげるときめき もんげだけの夢 叫ぶわ ハゲしく だって 私たち 仲間だ もんげ!